Krushの仕掛け人、格闘技業界を斬る!=特別インタビュー

t.SAKUMA

ここ10年のベストバウトは?

前田尚紀(右)vs.梶原龍児の伝説の一戦を含めて、多くの名勝負を生み出してきた全日本キックとKrush 【t.SAKUMA】

――それでは、ここからは選手や試合の思い出も語って頂きたいと思います。宮田さんにとって、ここ10年程でのベストバウトはありますか。

 ん〜、それは難しいですね。Krushでいうなら、(山本)元気と桜井洋平に始まって、石川(直生)のライト級グランプリで3試合続けてのKO勝利も思い出深いし、トーナメントで言ったら日下部竜也と寺戸伸近、“狂拳”竹内裕二と野杁正明のダブルノックダウンもありました。全日本時代だったら、前田尚紀と梶原龍児の一戦や、小林(聡)がラジャの現役王者テーパリット(シットクヴォンイム)を倒したときもだし、心が震える試合が多くありましたね。1つだけというのは難しいですね〜、順番はつけづらい。あの日のあいつは凄かったなってのはたくさんありますね。

――やはり、これだけ名勝負が多いというのも、先程お話された会場の雰囲気など小さなことの積み重ねがあってこそかと思います。それでは、ベスト興行となると思い当たる大会はありますか。

 記憶に新しいからかもしれませんが、今年の4月30日(後楽園ホール)の興行は良かったですね。大震災があった後でしたが、お客さんもしっかり来てくれたし。ベルトもつくれて、ここで、というところで選手達も良い試合をしてくれた。

――たしかに、あの興行の盛り上がり方は凄かったです。それでは思い出に残る選手をあげるとすると。

 たくさんいますね〜。まずは、三上洋一郎かな(笑)。やすけん(安川賢)、前田憲(作)ちゃん、土屋ジョー、貝沼慶太、佐久間晋哉、延藤直樹、金沢久幸、力王……みんなに思い入れがありますね。無名の3回戦で消えちゃった選手の中にも記憶に残る選手はいるし、佐藤嘉洋くんは苦しいところで助けてくれたし。ただ、一番ケンカしたのは小林かな。

――ケンカしましたか。

 今もケンカ中ですから(苦笑)。本来はジムの会長がいて選手がいてという形なのだけど、小林の場合は特別で、NJKFから出戻りで全日本キックに帰ってきたと思ったら全日本キック自体が倒産(97年)してしまって。小林が「オレ、どうすればいいんですか」って。僕も「いや、オレだって喰えねえよ」って。そういう厳しい時代を過ごしてきましたから。それでも、小林にはテーパリットやナムサックノーイ(ユッタガーンガムトーン)、サムゴー(ギャットモンテープ)といった強豪タイ人との試合も含めて、思い出がたくさんありますね。ケンカもしたし、貸しも借りもあるしで、一番話したのが小林ですかね。

――全日本キック出身のキックボクサーといえば、魔裟斗さんもいますが何か思い出はありますか。

 魔裟斗はプロテストの時から異彩を放っていましたからね(笑)。当時、魔裟斗が所属していた藤ジムの加藤さんから「今度スゴイの連れてくるから」って聞いていて。いざプロテスト当日になったら、集合時間に遅刻してきて、やりたくなさそうにサンドバック叩いている奴が魔裟斗だったという(笑)。ところが、テストのスパーリングになったら16オンスのグローブでKOしちゃって。全日本キックのプロテストは10年くらい見ましたけど、16オンスのグローブでダウンを取ったのは二人だけで、その一人でしたね。

――たしか、リングネームの名付け親は宮田さんだったと聞きますが。

 ライセンス登録の時、本名からカタカナに変えた「マサト」で申請書が送られてきて、普段ならそのまま登録してしまうのを、その時だけ何かひっかかって。それまで選手の名前をいじったことは一度もなかったんだけど、ひとまず会長に「ちょっと考えさせてください」って伝えて。それで急遽、何個か候補を作ったのを出版社の人に見てもらって決めたのが「魔裟斗」だったんですよ。本人は「こんなバカみたいなの嫌だ。今どき暴走族みたいなの流行らないよ」って嫌がっていたんだけど、加藤会長が「これでいくからって」強引に押し切って(笑)。

「オレの生きる道。人生を懸けてやっていく」

次回9.24後楽園ホール大会では、“狂拳”竹内裕二と石川直生が2年ぶりの再戦 【t.SAKUMA】

――今でも小林さんや魔裟斗さんなどと交流はあるのですか。

 今はないですね。プライベートで会って昔話をしても何の意味もないですから。仕事でなきゃ。やっぱり、仕事として関わってきたからこそ、真剣なやりとりがあったし、それが面白かったわけで。みんな大人になって、オレはこうやっていくっていうのが、今はそれぞれにあって。現在は全く交流はないですね。小林だったり立嶋だったり魔裟斗だったり濃い時間を過ごしましたけど、過去を振り返るよりは今の子たちの事を一生懸命に考えるのが僕の役目なので。今育っている子が大事なんで。全日本キックがなくなってからは昔のビデオを見ることもぐっと減りましたね。年寄りになればいいかもしれませんが、今は昔話をするにはまだ早いですね。僕はまだ現役なので。

――Krushの今後についてお聞かせください。

 まず、今度の24日の大会に関して言えば、Krushと中国「英雄伝説」の3対3マッチに注目してほしいですね。中国のファイターはハートも体も強いですし、いま急速にレベルアップしています。彼らに対して、(卜部)弘嵩と梶原(龍児)、そして山崎(秀晃)がどんな闘いを見せてくれるのか。油断していると本当に危ないですよ。あとは、狂拳(竹内裕二)と石川ですね。この勝負は、煽りVから入場、結末まですべてが見逃せませんね。10月は、22歳以下の−63kg日本最強決定トーナメント「Krush YOUTH GP 2011」です。Krushの新世代は(卜部)功也くん、野杁(正明)くん、みんな出ますし、HIROYAくんの初参戦も決まりました。この大会はチケットがメチャクチャ売れていますね。11月、12月も後楽園大会が続きますし、とにかく年末まで突っ走っていきますよ。あと、CSTVのGAORAさんも乗ってくれていて、年内はスペシャル枠や生中継を考えてくれているようです。

――長期的な見通しで言うと、いかがでしょうか?

 この先、何をやろうかというのは、今やっている興行の延長線上にあるものなので、毎回毎回の興行があって、その結果で浮かんできたものをやっていきたいですね。選手が出たいと思い、ジムさんが選手を出したくなるようなイベントにすれば、結果はついてくると思います。来年の後楽園ホール大会は、今年より多い9大会をやりますから期待してください!

――最後にプロモーターとしての抱負をお聞かせ下さい。

 とにかく先を見なきゃと。全日本キックが無くなるまでは、雇われとしての興行部長でありプロモーターだったなと。もちろん、責任感を持ってやっていましたけど、そこに責任はなかったんですよ。2年前に全日本が無くなって、自分で会社を起ち上げてからは、もろに数字を見るようになりましたから。以前も数字を見てはいたけど、例えチケットが売れていなくても「また頑張ります」だけで、給料が減ることはなかったわけです。でも、今は本当に売り上げがきついと自分の給料もとれなくなる。やはり、興行に対する考え方が変わりましたね。これで、飯を食っていく。これがオレの生きる道だと。これまでもそうでしたけど、これからも人生を懸けてやっていきますよ。

【t.SAKUMA】

■プロフィール
宮田充 Miyata Mitsuru
1968年 熊本県出身

高校卒業後、全日本プロレスを経て、全日本キックを主催するオールジャパン・エンタープライズに入社し、興行面で中心的な役割をはたす。09年、全日本キックの消滅にともない、Krushを主催する(株)グッドルーザーを設立し代表を務める。格闘技プロモーターとして、業界関係者から高い評価を受ける一人。

Krush オフィシャルサイト
http://www.krush-gp.com/

Krush オフィシャルブログ
http://spora.jp/krush/

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@Krushmm

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