Krushの仕掛け人、格闘技業界を斬る!=特別インタビュー

t.SAKUMA

魅力ある格闘技興行を連発してきた仕掛け人・宮田充Krushプロデューサー。格闘技界や魔裟斗との逸話、現在イチオシのプロレスラーなど多岐にわたり話を聞いた 【t.SAKUMA】

 浮き沈みの激しい格闘技界において、魅力ある興行を安定して発信し続けるプロモーター宮田充氏。09年、20年間にわたり中心的な役割を担ってきた全日本キックボクシング連盟が消滅すると、自らKrush(立ち技格闘技イベント)を立ち上げ、全日本キックの火を絶やすことなく多くの選手やジムを救った。

 今回のインタビューでは、格闘技に携わるようになったきっかけから、プロモーターとしての考え、さらには魔裟斗との逸話や現在イチオシのプロレスラーまで多岐にわたり話を聞いた。

きっかけは全日本プロレスと東スポ

――スポーツナビの読者には宮田さんの事を知らない人も多いと思いますので、格闘技に携わるようになるまでの経歴をお聞きしたいと思います。

 中学生ぐらいからプロレスが好きで会場に行って試合を見てました。高校1年の冬に友達と全日本プロレスの最強タッグでスタン・ハンセン&ブルーザー・ブロディvs.タイガー・ジェット・シン&上田馬之助というカードがあって、それをどうしても見たくて、当時住んでいた葛飾から横須賀の会場まで見に行ったんです。その日は会場にはかなり早く着いしまったんですが、その時ちょうど、「そこの青年ふたり〜、ちょっと手伝ってくれないか?」って、仲田龍(現・NOAHゼネラルマネージャー)さんに声を掛けられたんですよ。それでグッズのポスター巻きや、リングの後片付などを手伝って、それが始まりですね。そこから、高校生の時は学校もいかずに全日本プロレスのアルバイトを手伝うようになって、地方興行にも連れて行ってもらったりしました。高校卒業後は全日本プロレスに社員として入り、ファンクラブの仕事だったり、広報の手伝いなどをしていました。ただ、長くは続かなくて一年程で全日本は辞めて、その後は銀座のクラブで働いていました。

――格闘技プロモーターとして活躍する宮田さんの過去に、全日本プロレスや現在はNOAHで活躍される仲田龍さんの名前が出てくるのは面白いですね。それでは、格闘技界にはどのような経緯で携わるようになったのですか。

 1989年頃にロブ・カーマンとドン・中矢・ニールセン戦(全日本キックボクシング連盟)の試合が日本武道館であったんですけど、たまたまその試合のチケットプレゼントが東スポに載っていて、それに応募したんです。結果はハズレだったんですけど(笑)。ただ、それに応募したことによって、全日本キックボクシングからダイレクトメールが届くようになって、その中のチケット案内にまぎれてスタッフ募集の情報があって、それがきっかけで全日本キック(オールジャパン・エンタープライズ)に入社することになりました。ちょうど、その頃に会場で観戦していたU−COSMOS(U.W.F.)の興行で鈴木みのるに勝ったモーリス・スミスが全日本キックに参戦するという情報があったりで、なんか格闘技も面白そうだなって感じがしてたので。入社した年は、全日本キックの興行が武道館で2回あって、まだK−1は始まる前でしたが、格闘技自体はU.W.F.も含めて盛り上がっている感じでしたね。ただ、キックボクシングを初めて見たのは入社してからなんですけどね(笑)。

――格闘技界への直接的な関わりを作ったのは、東スポのチケットプレゼントに応募しとことでしたか。でも、東スポをチェックしている時点で、やはり原点はプロレスファンということですね。ところで、プロレスファンであった宮田さんが、キックボクシングの試合を見て面白いと感じることはできたのですか。

 当時はU.W.F.もありましたし、キックボクサーや蹴り技というのも抵抗なく受け入れることができたのかもしれません。

――なるほど。ところで、宮田さんが全日本キックに入社した頃に比べると、現在は格闘技団体が飛躍的に増加しましたね。

 たしかに当時は格闘技の団体数は少なかったですね。90年頃は、ボクシング以外にはキック団体が3団体ほどで、それぞれ月に1回か2カ月に1回程度しか興行をしてませんでしたからね。総合格闘技もまだほとんどなく、プロレス団体にしても限られていたわけで。今から考えると、のどかな時代でしたね。

「低迷? やれることは、まだたくさんある」

――現在は団体が乱立して、都心では毎週末のように興行戦争が行われています。なぜ、こんなに興行が増えたのでしょう。

 たしかに興行は多いですね。誰でもできますからね。

――誰でもできますか。

 誰でもやっているじゃないですか。誰でもやるし、誰でもできるし。

――なぜ、多くの人が興行をやろうとするのでしょうか。

 ん〜、儲かると思うんじゃないでしょうか(苦笑)。

――例えば、他団体と興行の開催日を調整することなどはあるのですか。

 後楽園ホールに限っていえば前年の段階でスケジュールが決まってしまいますし、その他の会場との調整は難しいですね。もちろん、K−1さんとは出場選手が重なるわけですから連絡は取らせて頂いてます。

――今年はDREAMとKrushの興行日程がよく重なっているのですが。

 そうですね。ただ、Krushは前年で後楽園の日程が決まっていますし、DREAMさんのような大箱で開催する興行はまた事情が違うだろうし難しいですね。両方を見たいファンの人もいるだろうし、取材をするマスコミの人たちにとっても大変ですよね。会見なんかは、なるべく重ならないようには調整しているのですが。

――団体が乱立して興行が多くなる一方で、業界全体が低迷している現実もあると思います。どのようにお考えですか。

 僕自身が格闘技界の全体を見るということはあまりないです。たしかに業界全体が厳しいのかもしれません。集まれば、みんなが愚痴ばかりを言っていることもあります。ただ、“リングもの”で食っていくのなら、やれることはまだまだたくさんあると思います。Krushに関していえばファンはついてきてくれているし、選手も着実に育っています。最近、やたら格闘技界が厳しいという話を聞きますが、Krushに関しては問題はないですよ、としか言いようがありません。

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