NBAオールスターをめぐって、ある選手の不満

山脇明子

8年ぶりとなるルーキーの選出に……

 2月20日(現地時間)にロサンゼルスで行われる米プロバスケットボール協会(NBA)オールスター戦の控え選手が3日発表され、クリッパーズのブレイク・グリフィンが選出選手に名を連ねた。ルーキーの選出は、2003年の姚明(ヤオ・ミン)以来だ。
 グリフィンは、ルーキーながら華々しい活躍で、弱小チームとして知られていたクリッパーズを盛り上げている。迫力のあるダンクなど、見るものを魅了させるプレーが光り、「選ばれて当然」といえる存在だ。

 ところが、彼の選出に不満をぶちまけた選手がいる。トレイルブレイザーズのアンドレ・ミラーである。
 「彼は(スポーツ専門局)ESPNのハイライトで毎日のように扱われている。ファンが彼のプレーを見たいのは分かるけど、彼をチームではなく個人として扱いすぎている。レブロン・ジェームズでさえルーキーの時はオールスターに選ばれていないのに」。つまり、グリフィンの選出は不公平というわけだ。

 ミラーはリーグでも有数のポイントガードであり、キャリア12年目のベテランだ。しかし、NBAファンでなければ彼の名前を知っているものは少ないと思う。それほど地味なタイプの選手なのである。
 ミラーは12月にクリッパーズと対戦した際、グリフィンに激しく体当たりし、出場停止処分を受けた。それが今回のコメントにつながったと見る者も少なくないが、それ以上に大きな理由があると見ている。

ミラーが口にした不満の真意

 ミラーが所属するブレイザーズでは今季5年目のラマーカス・オードリッジが著しい活躍をしている。彼の奮闘により、チームは控え選手発表時点で西カンファレンスの8位とプレーオフに進出できる順位を保持している。「オールスターに選ばれるべき選手」と誰もが認めているが、ヘッドコーチからの投票で決まる控え選手から漏れてしまった。ミラーは、それに対し腹を立てているのだと思う。

 クリッパーズのイメージを大きく変えたグリフィンは、ミラーが言う通り、試合があるごとにそのハイライトがESPNの人気番組で映し出される。だが、プレーに芸があるわけではないオードリッジがハイライトで取り上げられることは極めて稀(まれ)だ。成績はクリッパーズより上といえども、それほど注目を浴びるチームではないブレイザーズは、試合の取り上げられ方も小さい。
 このようなチームがあるから、控え選手の投票を前に、各チームは「わがチームの○○選手に一票をお願いします」と他チームのヘッドコーチに高級ワインなど、さまざまなプレゼントを贈る。ヘッドコーチは自らのチームの選手は選べないので、チームによってはこのキャンペーンを派手に行うところもある。
 だが、「やはりテレビによる露出度の多さにかなうものはない」とミラーは言いたいのであろう。

 今回は、オードリッジのみならず、レーカーズのラマー・オドム、ウォリアーズのモンタ・エリスら、選ばれてもおかしくない選手が続々と選出から漏れている。
 だがこれはヘッドコーチがオールスターにふさわしいと思った選手に投票した結果であり、選出されなかった選手は気持ちを切り替えるしかないのである。

 ただそんな時、自分のために声を上げて不満をぶちまけてくれるチームメートがいることは、結構うれしいことではないだろうか。
 チームスポーツでは、“help each other(互いに助け合う)”や“defend each other(互いにかばいあう)”という言葉がよく使われる。
 それがゲーム以外で行われるのも、素晴らしい“チームワーク”だと思う。

<了>
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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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