１９９４年のシーズンを最後にラムズとレイダーズが同時に去って以来、米アメリカンフットボールリーグ（ＮＦＬ）のチームがないままのロサンゼルス。
　以降ロスにＮＦＬチームを取り戻そうと投資家グループたちによる積極的な動きがあるものの、資金集めに苦労するなどでそのチャンスを失ってきた。しかし、その動きは変わらず続いており、今はどこに新スタジアムを建設するかが議論になっている。

　その一つがロサンゼルスのダウンタウン。米プロバスケットボール協会（ＮＢＡ）のレーカーズとクリッパーズ、北米アイスホッケーリーグ（ＮＨＬ）のキングスのホーム、ステイプルズセンターの隣に立地するという計画だ。
　ステイプルズセンターは、ダウンタウンの中心街から数ブロック離れた場所に位置する。かつてはコンベンションセンターがあるだけのかなり寂れた場所であり、まさに「にぎやかな場所から一本道をはずれただけで、危険区域となる」という言葉そのものの場所。イベントが盛んに行われている昼間はともかく、それ以外は人が寄り付かない場所だった。
　ところが、９９年にステイプルズセンターができ、その向かいに“ＬＡ　Ｌｉｖｅ”というイベント広場が２００８年から徐々にオープン。ミュージック・アワードなど全米から注目される大イベントを行うことで有名な“ノキア・シアター”、グラミー賞の歴史を見ることができる“グラミー・ミュージアム”、映画館、高級ホテルに高級レストラン、さらにスポーツメディアの大御所『ＥＳＰＮ』のロサンゼルス・オフィスとスタジオも同地に開設されるなど、まさにスポーツとエンターテイメントの街、ロサンゼルスを象徴する場所となっている。

　昨年末には、元レーカーズのスーパースター、マジック・ジョンソン氏が、自らが保有していたレーカーズの株と所有していたスターバックスの全フランチャイズを売却して、ＮＦＬチーム誘致を狙うグループに加わることを発表し盛り上がりを見せている。
　同グループから発表された完成図は、ロスのダウンタウンをさらににぎやかにするイメージが十分に沸くもの。中心人物の一人であるエド・ロスキー氏は、「ロサンゼルスに住むスターたちが足を運びやすい場所にするべきだ」と語ったが、レーカーズの試合がそうであるように、ダウンタウンで試合をすればエンターテインメント界のスターたちがこぞって観戦に来て華やかになるだろう。まさにロスにぴったりのシチュエーションである。

　ただ、同計画を実行するためには、コンベンションセンターの一部を取り壊さなければならないことや、フットボールでお決まりのただっ広い駐車場でのテールゲート・パーティー（駐車場でバーベキューなどして試合前後、または試合中の飲食を楽しむパーティー）ができないこと、大型トラックなどの駐車場の確保に問題がある上、１０億万ドル（約８２９億円）の費用がかかることなどから疑問の声も挙がっている。しかもロサンゼルス市と同地オーナーの合意、ロスに移転するチームについてのＮＦＬとの合意を今年の３月までにまとめようとしているが、ＮＦＬでは３月に現労使協定が切れることもあり、それらの実現は困難との見方が強い。

　一時は、ゴーストタウンになりつつあると言われたロスのダウンダウンがステイプルズセンターの建設に合わせ生まれ変わってきた。その移り変わりを見てきているだけに、アメリカンフットボールで沸くロスのダウンタウンをぜひ見てみたいと思う。

＜了＞