ジャイアンツ対レンジャーズは歴史的なシリーズ=ワールドシリーズ見どころ

出村義和

球史に残るような大熱戦に期待

レンジャーズ、第1戦の先発は大舞台で無類の強さを発揮する左腕クリフ・リー 【Getty Images】

 番狂わせシリーズの開幕だ。ともにディフェンディング・チャンピオンを倒してのワールドシリーズ進出。レンジャーズが勝てば、前身のワシントン・セネタース時代から球団創設50年目の初優勝。ジャイアンツがものにすれば、ニューヨークにフランチャイズを置いていた1954年以来、そして西海岸移転後では初めての優勝となる。どちらが勝っても歴史的なシリーズはストーリー性にもあふれている。所属する日本人選手がいないこともあってなじみの薄い両チームかもしれないが、チームカラーにも特徴があり、熱狂的な地元の声援をバックに、球史に残るような大熱戦が期待できる――。

 レンジャーズはメジャートップのチーム打率(2割7分6厘)を誇り、ア・リーグ優勝決定戦(以下ALCS)でもヤンキース投手陣から6試合で合計38得点を奪った強力打線が売り物だ。一方のジャイアンツはメジャートップのチーム防御率(3.36)をマーク、ポストシーズンでは1試合平均2.9失点しか許していない強力投手陣が支える。しかし、だからといって『打のレンジャーズ』対『投のジャイアンツ』という単純な図式にはならない。レンジャーズはこれまでポストシーズンで負けなしの7連勝を記録している大黒柱クリフ・リーを始め、投手陣も安定しているからだ。しかも、守備も堅実。また、スピードもあり、状況に応じたバッティングのできる打者も多く、ただ打つだけではない柔軟性のある攻撃力を持っている。

先発が7回まで試合を作れるか!?

 その打線の火付け役がメジャー2年目、一番を打つ22歳のエルビス・アンドラスだ。ポストシーズンの全試合で安打を放ち、7盗塁を決めている。昨シーズン、母国ベネズエラ出身でゴールドグラブ賞11回の名手オマー・ビズケル(現ホワイトソックス)に指導され、守備だけでなくすきを突く走塁も身につけている。このアンドラスが好調を持続するようなら打線も引き続き活発な攻撃をするに違いない。

 9月に肋骨(ろっこつ)を折り、痛みと戦いながらALCSで4本塁打を打ち、MVPに輝いた主砲ジョシュ・ハミルトンはチームの士気を高めている。「この時期に100パーセントの状態でプレーしているヤツはいない」という闘志が、チームメートを奮い立たせる。
 このほかにも、ALCSで打率3割3分3厘を打ったチームリーダーのマイケル・ヤング、当たりが出始めたブラディミール・ゲレーロ、ポストシーズン5本塁打のネルソン・クルーズなどタレントぞろい。どこからでも一発が飛び出す怖さを秘めた打線だ。

 投手陣はここまでのポストシーズンで3試合に登板、いずれも2ケタ三振を奪い、3勝を挙げているリー以外にも、ALCSで2勝した元広島のコルビー・ルイスが好調だ。もうひとりの先発C・J・ウィルソンは制球にムラがあるのが気がかり。
 ブルペンは21歳、100マイル(約161キロ)の剛球ネフタリ・フェリスがクローザーを務める。きん差での登板で依然として不安は残るが、ALCSで2試合投げたことがプラスに働くに違いない。中継ぎ陣はバラエティに富んでいるだけに、先発が7回まで試合を作れば、かなりの確率で勝ちが期待できる。

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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