ジャイアンツ対レンジャーズは歴史的なシリーズ=ワールドシリーズ見どころ

出村義和

ジャイアンツは強力投手陣頼み

ジャイアンツのエース右腕・リンスカムには万全の体調でマウンドに上がることができるか? 【Getty Images】

 一方のジャイアンツはどうしても強力投手陣頼みということになる。先発の3本柱が本来の投球をすれば、得意のもつれた展開に持ち込める。第1戦でリーと対決するエースのティム・リンスカムはナ・リーグ優勝決定シリーズ(以下、NLCS)でも完全試合男ロイ・ハラディと2度対決して1勝1敗。第6戦には8回にセットアップマンとして登場、先頭打者を三振に打ち取ったが、その後連打されて降板した。やはり、疲れがみえる。ファーストボールは走りが悪く、決め球のチェンジアップにもキレが欠けている。絶好調のリーとは2度の対決ということになるだろうが、苦戦は免れないだろう。

 第2戦以降はNLCSと同様、パワーのあるマット・ケーン、威力のあるスライダーを投げる左腕ジョナサン・サンチェスで回すことになるはずだ。レンジャーズ同様、できる限りディープな回まで引っ張りたい。ブルペンの質は高いが、理想は先発のあとにすぐポストシーズンでも調子のいい守護神ブライアン・ウィルソンにスイッチしたいところだ。

ジャイアンツの不思議な力

 打線はレンジャーズに比べると、かなり見劣りがする。NLCSでの6試合で合わせて19得点しか挙げられなかった。一番当たっているのはNLCSで3本塁打を放ってMVPを獲得したコディ・ロスだ。しかし、大きな期待はかけられない。あくまでも伏兵的選手だ。ジャイアンツにはそういう選手が多い。NLCSで優勝を決める一発を放ったフアン・ウリベにしても、24本塁打を打ってはいるが、あくまでも脇役だ。

 最も信頼の厚い3番オーブリー・ハフは2部門でチームトップの成績を残してはいる。しかし、それでも26本塁打、86打点と寂しい数字だ。ちなみにワールドシリーズ進出チームで30本塁打、90打点以上の選手がいないチームは90年のレッズ以来の珍事となる。(もっとも、レッズは優勝したが)このチームはそれほど打てない。だから、必然的に新人の4番バスター・ポージーに期待がかけられるが、大一番のリードに神経をすり減らしているので、爆発力を求めるのは酷だ。しかし、ジャイアンツには不思議な力がある。機動力に優れているわけでもないのに、数少ないチャンスを得点に結びつけることができるのだ。レギュラーシーズンでも、ポストシーズンでも、そうやってものにしてきた少ない得点を投手陣が守り切り、勝ってきた。その不思議なパターンをワールドシリーズでも繰り返すことができるだろうか。

 過去、サンフランシスコで行われたインターリーグではジャイアンツが無傷の9連勝をマークしている。ホームフィールド・アドバンテージに恵まれたジャイアンツが2連勝すれば、シリーズはもつれて第7戦でジャイアンツ優勝の可能性もあるが、1勝1敗だとレンジャーズが地元で初優勝を飾るかもしれない。いずれにしても、好投手が続々と登場し、どちらかが優勝とは無縁だった半世紀の長い歳月にピリオドを打つエキサイティングなシリーズになるだろう。

<了>

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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