2連覇狙うヤンキースは苦戦か?=MLBプレーオフ ア・リーグ展望

出村義和

ヤンキース投手陣の大黒柱・サバシア 【Getty Images】

 MLBのポストシーズンが6日(日本時間7日)に開幕する。今年は数年来の実力伯仲ぶりを示すように、2年連続での進出チームは、ワールドシリーズ2連覇を目指すヤンキースと、リーグ4連覇を果たして2年ぶりの頂点を狙うフィリーズ、91年以来3度目となるチャンピオンの座を狙うツインズの3チームだけ。また、両リーグのディフェンディングチャンピオンに挑戦する形となる6チームがそろって大胆な新人の抜擢(ばってき)で勝ち上がるという、世代交代が急速に進行するメジャーの姿を反映している点も興味深い。どのチームが秋の夜空に勝利の雄たけびを上げることができるのか。まず、ア・リーグから見ていこう――。

投手陣に不安抱えるヤンキースとバランスのとれたツインズ

「本命なきポストシーズン」――今年のア・リーグを一言で表現するなら、こういうことになるだろう。真っ先に名前の挙がるはずのヤンキースに大きな「?(クエスチョンマーク)」が付くからだ。先発陣で頼れるのが21勝をマークしたCC.サバシアしかいないという厳しい状況。ポストシーズン最多勝記録を持つアンディ・ペティットは後半戦をほとんど棒に振る股(こ)関節の故障が癒えたばかりで、本来の状態に戻っていない。A.J.バーネットは制球力が定まらぬままにシーズンを終える始末で、防御率5.26でも明らかなように、投げるたびにビッグイニングを与える危険性をはらんでいる。18勝をマークした成長株フィル・ヒューズはスタミナ不足が懸念され、レギュラーシーズン同様、打線の援護に恵まれない限り、勝利を期待するのは難しそうだ。
 ブルペンはシーズン途中に移籍してきたケリー・ウッドがセットアップマンとして機能して安定感が出た。しかし、肝心の守護神マリアノ・リベラが9月に入って打たれ、3度のセーブ失敗を記録した。球威がどこまで戻るのか。投手陣の悩みは深刻だ。

 打線はシーズンを通して低調だったデレク・ジーターが終盤に入って本来の姿に戻ってきた。アレックス・ロドリゲス(A・ロッド)の勝負強さも本物。中心打者として成長したロビンソン・カノ、30本塁打、100打点のマーク・テシェイラ、俊足のブレット・ガードナー、くせ者ニック・スウィッシャーら個性豊かな打撃陣がどこまで投手陣を援護できるか、そこが重大なカギになるだろう。

 そのヤンキースに地区プレーオフで立ちはだかるのが、最も早くポストシーズン進出を決めたツインズだ。昨年に続き、大砲ジャスティン・モアノーを故障で欠く戦いになるが、ジョー・マウアー中心の打線はリーグ3位の打率2割7分3厘を誇り、相変わらず強力だ。6月3日にメジャー昇格し、サードに抜擢した新人ダニー・バレンシアが打率3割1分1厘という期待以上の力を発揮して、打線を活性化させる役割を果たした。
 投手陣も第1戦に先発するフランシスコ・リリアーノを始め、先発、リリーフともにバラエティーに富んでいる。80年代後半から基礎力の徹底を図ったチーム作りをしているだけあって、すべてにバランスが取れ、守備も堅い。

 ツインズは例年以上にスキのないチームになり、ヤンキースを倒せる実力があると思えるのだが、どうにも相性が悪い。ポストシーズンでは敗退を繰り返し、昨年も地区プレーオフでストレートの3連敗。今年のレギュラーシーズンも2勝4敗と負け越した。その流れをどこで断ち切れるか。初戦、地元ターゲット・フィールドの大声援をバックに、サバシアをたたくことができれば、一気に勝利への階段を駆け上がれそうだが。

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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