2連覇狙うヤンキースは苦戦か?=MLBプレーオフ ア・リーグ展望

出村義和

完成度の高いレイズと打率トップのレンジャーズ

19勝を挙げたレイズのプライス 【Getty Images】

 リーグトップの96勝をマークしたレイズは若手選手が多く、荒削りな打撃で苦しむことも少なくないが、完成度の高いチームである。それを如実に示すのが、チーム打率が2割4分7厘とリーグ13位でありながら、得点力(802)はメジャー全体で3位であるということだ。メジャートップの盗塁(172)と、四球(672)を絡め、スモールボールで勝負を挑む。その象徴が粘り強さを買われ、捕手でありながら1番打者に抜擢された新人ジョン・ジェイソといえるかもしれない。また、併殺打が30球団で最も少ないというのも特筆すべき点だ。
 レイズは守備も堅い。詳細なスカウティングリポートに基づいて、打者ごとに守備位置を大胆に変える。攻守に渡ってスキのない野球で最激戦地区といわれる東地区を制したレイズだが、不安は9月の月間最優秀投手賞に輝いた19勝のデービッド・プライス以外の先発投手陣が調子を落としていることだ。
 右のエース、マット・ガーザは制球難に苦しみ、ジェームズ・シールズは一発病に悩まされている。この先発陣がディープな回まで引っ張ることができれば、最多セーブのラファエル・ソリアーノが守護神を務める強力ブルペン陣で逃げ切れる。
 地区プレーオフの相手は今年4勝2敗と勝ち越しているレンジャーズだ。サイ・ヤング賞投手のクリフ・リー、成長著しいC・J・ウイルソンの左腕2人が立ちはだかる。しかし、今年のレイズは左腕先発相手に36勝20敗と大きく勝ち越している。しかも、ホームフィールドアドバンテージもある。三振を数多く喫しながらも、小技とタイムリーに出るホームランで勝つというユニークなパターンが展開されると、ワールドシリーズ初優勝という夢も膨らむだろう。


 11年ぶりのポストシーズンを戦うレンジャーズはメジャートップ打率(2割7分6厘)を誇る強力打線が売り物だが、バランスの取れたチームでもある。実際、チーム防御率はリーグ3位タイの3.93だ。リーの移籍で先発陣に大黒柱ができ、安定感が生まれた。40セーブで新人最多セーブ記録を更新したネフタリ・フェリスがクローザー役のブルペンは横手投げのダレン・オデイを始め、バラエティーに富んでいるが、けがで離脱しているセットアップマンのフランク・フランシスコが間に合うかどうかが気になるところだ。
 打撃陣は脇腹を痛めていた主砲ジョシュ・ハミルトンが何とか間にあい、ベストメンバーを組めることになったので得点力を心配する必要はなくなった。確実性のあるマイケル・ヤング、悪球打ちの名人ウラジミール・ゲレーロなどタイプの違う強打者がそろい、32盗塁の1番打者エルビス・アンドラスらの機動力も使えるのは心強い。
 不安があるとすれば、ロードでの試合で39勝42敗と負け越している点だ。特にポストシーズン進出の3チームの本拠地で一度も勝っていない。それだけに、敵地で戦うレイズとの初戦が大きな意味を持つ。

 本命不在のポストシーズン。どのチームにも勝つチャンスがあるだけに、例年にも増して激闘が繰り広げられるに違いない。

<了>

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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