“番狂わせ”を起こすベントナー=デンマークが誇る若きストライカー

栗原正夫

デンマーク代表のFWベントナー。故障を克服し、W杯の舞台で輝けるか 【栗原正夫】

 ポルトガルを筆頭に強豪がそろったワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会ヨーロッパ予選のグループ1。この“死の組”を1位で通過したのは、2大会ぶりの出場となるデンマークだった。そのデンマーク代表のエースは、194センチの長身を生かした高さに安定した足元の技術を兼ね備えるニクラス・ベントナーだ。
 しかし、ベントナーはそけい部(脚の付け根)の故障からの復帰が遅れ、5月27日のセネガル戦(2−0で勝利)、6月1日のオーストラリア戦(0−1で敗戦)に続き、同5日の南アフリカ戦(0−1で敗戦)までも欠場することになった。
 5日、デンマーク代表チームドクターのソエン・コルン氏は順調に回復しているとコメントを発表し、ベントナー本人も明るい表情で「大事を取って休んだだけ」と口にしている。果たしてベントナーはW杯に出場できるのか。実戦から遠ざかったまま、ぶっつけ本番でW杯を迎えることになったデンマークが誇る22歳のストライカーは、W杯を直前に控え、何を思うのか。ランニング中心の別メニュー調整を続けていながらも、気さくにインタビューに応じてくれた。

決勝トーナメントは何が起きても不思議じゃない

――デンマーク代表に合流してから別メニューでの調整が続いているけど、ケガの状態はどうかな?

 そけい部を痛めてからしばらく経つんだけど、徐々に良くなってきている。親善試合には出られないかもしれないけど、いま無理してもしょうがない。W杯初戦には間に合うはずだよ。

――デンマーク代表のチーム状態はどう?

 とてもいいよ。楽しく、かつハードにトレーニングしている。いまから、代表としてW杯に行くのがとても楽しみだね。

――君にとってW杯は初めてだけど、どんな大会になると想像している?

 そうだね、ワクワクしているし、ものすごく楽しみだ。何しろ世界最大のサッカートーナメントだから、素晴らしい大会になると思う。W杯出場は僕のキャリアで最大の目標だったから、こんなに若いうちに実現できるなんて最高だよ。もちろん現実的に考えれば、グループリーグを突破できなかったら、デンマークとしては相当がっかりするだろうね。でも、逆に決勝トーナメントまでたどり着ければ、何が起きても不思議じゃない。順当に行けば、僕らが決勝トーナメント1回戦で当たるのはイタリア(デンマークがE組2位、イタリアがF組1位の場合)。ベスト16で前回優勝国と対戦するなんて、大きな挑戦だよね。でも、W杯には優勝するつもりで臨むよ。歴史的にもデンマークは数々の番狂わせを起こしているし、今回も何か起こったとしても不思議ではないでしょ。

――個人的な目標はある?

 デンマークの優勝に貢献して、結果として得点王になれたら最高だよ(笑)。まあ、それは言い過ぎとしても、正直僕はほかの選手と比べても、テクニックが劣っているわけでもなく、シュートが下手なわけでもない。とにかくリラックスしてプレーできれば、現実的には2点から5点ぐらいは決められるんじゃないかな。

――予選ではポルトガル、スウェーデンの強豪と同グループになりながらも見事に首位通過。何が良かったのかな?

 初戦のハンガリー戦は引き分けだったけど、次のアウェーのポルトガル戦で勝利できたのが大きかった。僕もひとつゴ−ルを決めることができたけど、2度のビハインドを跳ね返したわけだからね(終盤の2ゴールで3−2と逆転勝ち)。あれでチームに勢いがついたと思う。
 僕自身予選では3ゴールしか挙げられなかったけど、そのうち2点はポルトガル戦で決めることができた。ホームの試合で決めた胸トラップからのゴールは完ぺきだったし、やはりポルトガルとの直接対決に勝ち越せたのが良かった。もちろん、ライバルのスウェーデンに負けなかったこともね。とにかく、序盤にグループをリードするような展開に持ち込めたのが本大会出場につながったと思う。

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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