“番狂わせ”を起こすベントナー=デンマークが誇る若きストライカー

栗原正夫

僕らはあまり日本の情報を持っていない

ベントナーは「2点から5点くらいは取れる」と自信を見せた 【Getty Images】

――デンマークは日本と同じグループになったけど、グループEをどう見ている?

 オランダのことはよく知っている。対戦経験もあるし、僕はアーセナルでプレーしているから、チームメートのファン・ペルシはもちろん、オランダ代表の選手とはクラブレベルでも何度も対戦しているからね。ファン・ペルシは今季ケガで苦しんでいたものの、復帰してからはすごく調子を上げているから要注意だよ。オランダは、特に攻撃陣にタレントがそろっているし、南アフリカ大会でも優勝候補の一つに数えられるんじゃないかな。
 それから、カメルーンのアレクサンドル・ソングもチームメートだ。とにかく体が大きくて、フィジカルが強い。それに今回はアフリカ大陸での開催ということもあって、相当モチベーションが高いようだから、簡単には勝たせてもらえないだろう。日本は小柄だけど、スピードがあると聞いている。3チームとも個性がまったく違うチームなので、デンマークにとっては油断できないグループだよ。

――グループリーグを突破する自信はある?

 もちろん、グループリーグは突破したいと思っている。オランダが強敵なのは分かるけど、どこか飛び抜けた長所があるというチームはないと思うから、どこのチームも勝ち抜くチャンスはあるんじゃないかな。スタイルの異なる難しい3チームが相手だから、そう簡単ではないと思うけどね。

――もう少し日本についての話を聞きたいんだけど、チームとしてはどんな印象を持っている?

 とてもいいチームスピリットを持っていると思う。選手一人一人が戦う気持ちを持っていて、選手同士もお互いをよく理解している。そういう意味では、デンマーク代表と似ているかもしれない。勝つためには、個人の力も必要だけど、もっと大事なのはチームスピリットだからね。けど、残念ながらオランダやカメルーンに比べると、僕らはあまり日本の情報を持っていないんだ。

――デンマークがグループリーグを突破するためには、第3戦の日本戦での勝利ということも大事になってくると思うけど、何か対策などは考えている?

 日本と戦う前にグループリーグ突破を決められていたら最高なんだけどな(笑)。でも、僕らはまだ日本とのゲームについては話していないんだ。それは、実際に対戦する時になってから考えるし、モアテン・オルセン監督からもアドバイスがあるはずだからね。まずは初戦のオランダ戦に集中すること。それから1戦1戦対処していく。でも、日本も間違いなく気を付けなきゃいけない相手だということは分かっているつもりだよ。

できることなら常にFWとしてプレーしたい

――アシスタントコーチのピーター・ボンデは「日本戦では長身のソエン・ラーセンをトップにして、君を左サイドで起用するのも面白いかもしれない」なんて言っていたけど

 え、ほんと? 僕はまだ、そんなことは聞いていないけど……。情報が早いね(笑)。正直、僕はこれまで自分のことをストライカーだと思ってプレーしてきた。でも、チーム事情もある。まあ、できることなら常にFWとしてプレーしたいというのが本音だけどね。

――日本人選手で知ってる選手はいる?

 何人かは知っているけど、まだそれほど準備をしていないからね。日本のことは、日本戦の前になって考えるよ。とにかく、1試合ずつ目の前の試合に集中していきたいんだ。

――例えばスコトッランドにいた中村俊輔とか……

 彼はセルティックでプレーしていたよね。ナ・カ・ム・ラ? ちょっと発音が難しいな……。でも、きっといい選手なんだろうね。確かチャンピオンズリーグ(CL)のマンチェスター・ユナイテッド戦でゴールを決めたことがあったよね。

――では、デンマークが大会を勝ち抜くには、どんなことが大切になってくるかな?

 デンマークは大国と比べて選手層が厚くないから、ベストメンバーで臨めるかどうかがすごく重要になってくる。デンマークは人口550万人の小さな国だからね。特に控えメンバーが手薄なポジションの選手は、けがをしないように気をつけないと。大会期間中、ベストメンバーで乗り切れれば、勝ち進めると信じているけど、けが人が出てしまうと苦しくなるだろうね。また、フィジカル面はもちろんのこと、メンタル面でもいい準備をしておく必要があると思う。

――デンマーク人に聞くと、目標はグループリーグ突破、ベスト8以上は難しいだろうって言う人が多いけれど、君自身はどう考えている?

 大事なのは現実的なスタンスを失わないことだよ。僕らだって優勝するつもりで臨むとは言ったけど、だからといって、デンマークには大国と同じだけの人材がいないことは自覚している。世界ナンバーワンのチームとして、南アフリカ入りするわけじゃないのは肝に銘じないとね。とにかく、ベストを尽くすだけだ。W杯を思い切り楽しみたいね。

<了>

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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