スキージャンプW杯、伊東が日本勢今季初の表彰台

小林幸帆

着実に順位をあげて表彰台へ

W杯ジャンプ個人第6戦で3位に入った伊東大貴(右端)。中央は優勝したシモン・アマン、左端は2位のビヨン=アイナール・ロモレン 【Getty Images】

 スキージャンプのワールドカップ(W杯)は、先週末に予定されていた個人第4、第5戦が開催地ハラホフ(チェコ)の雪不足で中止となり、今週末18日から20日にエンゲルベルク(スイス)でハラホフの代替戦1試合を含む個人3連戦が行われた。
 日本からは、岡部孝信、伊東大貴、栃本翔平(以上雪印)、葛西紀明(土屋ホーム)、湯本史寿(東京美装)、竹内択(北野建設)の6選手が参戦、3戦目で伊東が3位に入り、日本勢として今季初の表彰台となった。伊東は3戦連続“Man of the Day”に選出と、大活躍の3連戦となった。

 3戦連続の“Man of the Day”で分かるように、伊東は初日からアピール度の高いジャンプで1戦目6位、2戦目5位と着実に順位を上げると、当然の成り行きともいえる結果として、3戦目は表彰台に上った。予選をトップ通過した初戦は1本目16位と出遅れたものの、2本目で10人をゴボウ抜きし6位となり、好調を感じさせたが、それを確信に変えたのが2戦目の予選だった。
 ヒルサイズ(137メートル)ライン付近まで飛び(記録は132メートル)、それまでの選手と明らかに飛距離が違うところを見せると、観客席からはどよめきが起きる。こうして2戦目も予選をトップ通過し、1本目で6位と表彰台を狙える好位置につけたが、上位選手がきっちり2本そろえてきたため最終順位は5位。この試合後、イリアンティラ・ヘッドコーチからは「彼は近いうちに表彰台に上がれる」との言葉が出た。

 そして迎えた最終日、予選で伊東は2位と予選3連勝はならなかったが、1本目から134.5メートルで3位につけると、2本目の悪天候による中止を受けて1本目の結果が最終順位となり、1位シモン・アマン(スイス)、2位ビヨン=アイナール・ロモレン(ノルウェー)とともに表彰台に立った。
 約4年ぶり3度目の表彰台に「2本目がなかったので微妙。なんとなくラッキーで上がれましたけど、今度はちゃんと2本飛んで上がりたい」と、喜びの中に複雑な気持ちものぞかせた。

強豪を上回る結果にも「油断できない」

 夏の好成績が冬につながらないシーズンが続いているが、今季に関しては「うまく冬に入れている」と言い、理由として、夏の調整と最初の雪上ジャンプを変えたこと、100パーセント競技に集中できていることの、技術とメンタル両面を挙げた。
 見ている限りは好調そのものだが、本人は「どちらかといえばそうなるだろうけれど実感がわかない。ほかの選手が調子を落としているだけかもしれない」とあくまでも慎重。
 
 今季のW杯個人戦は、アマンとオーストリアのグレゴア・シュリーレンツァウアーの2人が一騎打ちを繰り広げているが、まずはこの2人を追うグループに今後も伊東が食い込んでいくことが期待される。エンゲルベルク3戦では、フィンランドのハリ・オリ、オーストリアのトーマス・モルゲンシュテルンやウォルフガング・ロイツルといった強豪を上回る結果を残したが、「いつ誰が調子を上げてくるか分からないので油断できない。これをキープしていくのが大変。いいジャンプの確率を10本中5本から7〜8本にまで上げてコンスタントな結果を出せるようにしたい」と、今後も彼ら上位陣と戦っていくために必要なものを見据えた。

 試合後には、上位3選手による会見にも出席した伊東、会見前は「英語は嫌だなぁ」と、あまり乗り気ではなかったが、そつなく質疑応答をこなし、「ずっと遠征に出ていて疲れている」と本音で会場を笑わせると、締めくくりでも「英語がうまくなくてすみません」と余裕のあいさつで笑いを誘った。
 また、“Man of the Day”の賞品、ウェハースを独り占めとなったが、「重いので日本に持って帰れるとしても1箱」と、さすがに持て余し気味だった。

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著者プロフィール

1975年生まれ。東京都出身。京都大学総合人間学部卒。在学中に留学先のドイツでハイティーン女子から火がついた「スキージャンプブーム」に遭遇。そこに乗っかり、現地観戦の楽しみとドイツ語を覚える。1年半の会社員生活を経て2004 年に再渡独し、まずはサッカーのちにジャンプの取材を始める。2010年に帰国後は、スキーの取材を続けながら通訳翻訳者として修業中。

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