スキージャンプW杯、伊東が日本勢今季初の表彰台

小林幸帆

各選手の順位に大きな変動なし

けがの影響が心配される竹内だが、少しずつ結果が上がってきている 【Photo:アフロ】

 伊東を除く日本勢の3連戦は栃本が23、24、25位、葛西が13、15、35位、竹内が49、35、27位、3戦目のみ予選通過の湯本が49位、岡部は3戦とも予選通過ならずと、各選手とも大きな順位変動がなく、「(現在の調子を)見てその通り」(菅野コーチ)という結果となった。

 菅野コーチは「葛西、栃本の両選手は自分のレベルをキープできているので条件さえ合えば結果は出てくると思う」と安心して見ている様子。開幕戦を日本選手最高の6位と好発進していた栃本に関しては、イリアンティラ・コーチが「技術に問題はないが、踏み切りのタイミングが遅い。気持ちの問題」と分析、菅野コーチは「まだ自信がないんじゃないかな、自分の中で強い自信が持てるようになってくればいい」と付け加えていた。

 菅野コーチが「いまひとつだけど、もう少し調子を上げてくれれば。五輪までにどの程度調整できるかというところ」と話したのが、湯本、岡部、竹内の3選手。
 竹内は夏を好成績で終えたものの、開幕戦直前に腰を痛めるというアクシデントに見舞われ、完治しないまま試合に出場している。ケガの影響が出ているが、「だいぶ普通に飛べるように戻ってきた。ケガがきっかけでついてしまった癖の修正に時間がかかったが、前よりはいいジャンプができるようになった」という言葉通り、結果も少しずつ上がってきており、7位につけた3日目の予選では小さくガッツポーズをする姿も見られた。調子を上げたままシーズン突入となるはずが、腰を痛めたことで狂ってしまったことには悔しさを隠さなかったが、「最初から調子がいいと(シーズン)後半もたないので、逆にいいかもしれない」と、ポジティブにとらえており、まずは腰を完全に治してからが勝負ということになるだろう。

 W杯開幕戦からエンゲルベルク戦までを振り返り、菅野コーチは「開幕戦が非常に良かったし、こうして表彰台にも登ったので、まあいいスタートを切ったんじゃないかな」と、まずまずの評価。
 ただ、国別順位は7位と、現時点では開幕前はライバルとみなされていたドイツ、ポーランドの後塵(こうじん)を拝している。菅野コーチは「エンゲルベルクまでの試合はコンディションも悪かったのであまり気にしていない」と言うが、どちらの国も選手がそろいつつあり、見過ごせない存在だ。

 日本チームは長い遠征を終え22日に帰国する。選手によっては24、25日にクリスマス返上で大倉山にて練習し、28日開幕のジャンプ週間に合わせて27日にオーベルストドルフ(ドイツ)入りする予定となっている。

アマンvs.シュリーレンツァウアー

 さて、W杯全体に目を向けると、エンゲルベルク大会はアマンとシュリーレンツァウアーの壮絶なバトルを際立たせることとなった。
 予選免除の両選手だが、連日、その予選の段階から他のトップ選手に約3メートルの大差をつけるなど、優勝の行方が“誰が?”ではなく、“どちらが?”で見守られたが、1戦目は地元の大応援を受けたアマンが1本目の首位を守り抜き優勝。W杯個人総合トップの象徴であるイエロービブをシュリーレンツァウアーから奪った。
 しかし2戦目はシュリーレンツァウアーが2本目でアマンを逆転、わずか1ポイント差で優勝をさらい、イエロービブも取り返した。
 そして最終日、1本目でジャンプ台記録タイとなる141メートルを飛びダントツ首位につけたアマン対し、シュリーレンツァウアーは130メートルで6位と出遅れ、そのまま優勝したアマンが再びイエロービブを手にした。昨季から続く両者の戦い、この先もまだまだ繰り広げられそうな勢いで、こちらも目が離せない。

<了>

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著者プロフィール

1975年生まれ。東京都出身。京都大学総合人間学部卒。在学中に留学先のドイツでハイティーン女子から火がついた「スキージャンプブーム」に遭遇。そこに乗っかり、現地観戦の楽しみとドイツ語を覚える。1年半の会社員生活を経て2004 年に再渡独し、まずはサッカーのちにジャンプの取材を始める。2010年に帰国後は、スキーの取材を続けながら通訳翻訳者として修業中。

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