「イニエスタなくしてメッシなし」=城彰二氏が語るクラブW杯の見どころ
カンプ・ノウで初めて鳥肌が立った
城氏はクラブW杯を通して「世界のサッカー事情を知ることができる」と話す 【宇都宮徹壱】
まず、カンプ・ノウでやれたということに関してはすごい喜びを感じましたね。入場の際に『イムノ』といってバルサの歌が流れるんですが、昔はアウエーのチームが先に入って待っていて、そして『イムノ』が流れてバルサの選手が1人ずつ出てくるんです。あのとき、ピッチに立って初めて鳥肌が立ちましたね(笑)。W杯や五輪などいろいろな大会を経験しましたが、緊張したことはないし、鳥肌が立ったこともないんですけど、あのバルサのカンプ・ノウで歌を聞いて選手が出てくる姿を見た瞬間に、鳥肌が立ちました。当時のチームにはクライファートやリバウド、コクーがいて、バルサの伝統が感じられました。あらためてすごいクラブだなと感じましたし、貴重な経験だったと思います。
――過去4大会、優勝は南米2回、欧州2回とイーブンです。今大会、バルセロナの一番の対抗馬と見られているのがアルゼンチンのエストゥディアンテスです。今年の南米チームをどう評価していますか?
試合を見ましたけど、南米らしいチームですね。個人技があってヨーロッパよりも粘り強い感じですね。最近は南米でも組織的なサッカーになってきているので、チーム力は非常に上がってきていると思います。このチームはベロンが中心ですが、南米のチームはほかにボカ・ジュニアースのリケルメもそうですけど、誰か1人を中心に置いて周りがうまくサポートするという印象が強いですね。運動量は落ちましたが、ベロンの経験や能力は非常に高いですし、繰り出されるパスやチームをコントロールする力はすごいです。それと、やはりしぶとい。勝負が懸かったら必ず目の色が変わって、たたきつぶすのが南米のすごさなのかなという気がします。
ベロンとは1998年W杯・フランス大会で対戦していて、しかも同じ年なんですよね。34歳であれだけのプレーをしているのはさすがですよ。経験値の高さ、ゲームを読む力、正確なキックが生かされて、エストゥディアンテスではうまく機能していると思います。
クラブW杯は世界のサッカーの本当の事情を知ることができる
エストゥディアンテスの攻撃をつかさどるアルゼンチン代表MFベロン 【Photo:ロイター/アフロ】
やっぱり個の能力を考えると、バルサが抜けていて、個の力はかなり上だという気がします。それに続くのが南米で、ちょっと力が下がるかなというのが僕のイメージです。そのほかのチームは、ゲームの流れによっては意外に波乱が起きそうなクラブだなと思います。(アジア代表の)浦項はセンターバックが韓国代表DFということで守備は堅いでしょうし、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)決勝はセットプレー2発で勝利しました。現代サッカーにおいてセットプレーは重要なポイントとなるので、ひょっとしたらそこにチャンスがあるかもしれません。アル・アハリには元ガンバ大阪のバレーがいます。1人で突破できる能力に、スピードもあるので、彼にボールが集まったときに何ができるかでしょう。(アフリカ代表の)マゼンベは未知のクラブですね。試合を少し見ましたが、選手のバネが違います。突拍子もないプレーを見せてくれるという期待感はありますね。
――こういう大会は、未知の世界、初めて見るサッカーの楽しさといったW杯とはまた違った面白さがありますよね
その国の特徴だったり、大陸の特徴は絶対にあります。しかも、それがクラブですから。代表よりも集まって練習する時間は長いので連係もいいでしょう。そう考えると、W杯よりも内容的にはすごくいいプレーが出てくるはずです。質の高いサッカーが見られると思いますよ。それに、初めて見るチームもあって、いろんな大陸のサッカー、世界のサッカーの本当の事情を知ることができます。ヨーロッパと南米の2強だけではなく、そういう楽しみ方もあると思います。
――これまでずっと日本で行われてきて、今大会はUAE(アラブ首長国連邦)での開催となります。それが大会にどのような影響を与えると考えられますか?
初めてUAEで開催されるということで、気温はそんなに影響はないかもしれませんね。冬は日中22〜23度で、夜は15度くらいまで下がるということなので。ただ、湿度はどうでしょう。僕は夏場にUAEに行っていたので、イメージとしては湿度が高いという気がします。湿度が高いと身体の動きがよくなかったりしますから。あとは芝生ですね。中東は独特の芝生でちょっと大きな葉っぱというか、日本みたいにきれいな芝生じゃないですから。あとは食事の問題。独特の香辛料に対応できるのか。たぶん、バルサとか強豪クラブはコックを連れていくと思いますが、ほかのチームはどうするのか気になりますね。