リーグ“再生”を目指して バレーボール、Vリーグのこれから

市川忍

昨季リーグ終了後、男子のNEC、女子の武富士(写真)が活動を停止した。厳しい状況のなか、Vリーグが向かう方向とは 【渡辺正和/アフロスポーツ】

 9月5日、大阪府立体育館で行われた近畿総合バレーボール大会にて、今年5月に休部を発表したNECの金子隆行と柴小屋康行が新天地でのデビューを果たした。胸に「SUNTORY」のチームロゴが入ったユニホームに身を包んだ金子は、初戦からスターティングメンバーとして試合に登場。攻守にわたる活躍でチームの準決勝進出に貢献した。翌週のサマーリーグ決勝ラウンドでも、今度は元NECの三上圭治郎がFC東京の一員として公式戦に出場した。
 こうして休部でチームを失った選手たちの活躍が話題となる中、9月18日にはVプレミアリーグ11〜12月分の対戦表が発表された。NEC男子や女子の武富士が休部に追い込まれ、厳しい逆風の吹き荒れる企業スポーツ界で、Vリーグはこれからどう変わろうとしているのか。

収益の向上を阻むひとつの壁

 2チームの休部が発表された直後の6月12日、Vリーグ機構は会長の梅野實を委員長とした「Vリーグ基本問題検討委員会」を発足した。男女各チームのバレーボール部長をメンバーに、これまで6回の会議を招集し、通常の役員会の中にも話し合いの時間を設けてきたという。Vリーグ機構の梅北精幸理事は言う。
「まずは今、早急に手を付けなければいけないことと、中長期的に手を付ける課題に分け、Vリーグ機構がすべきこととチームがすべきことを洗い出しているところです。真っ先に話し合ったのは今シーズンのVリーグの集客についてですね。企業の活動予算が削られることが予想される中、応援団などチームが購入してくれるチケットの収益に期待をするのは難しい。チーム関係者ではなく、いかにして一般のお客様にチケットを買って、足を運んでいただくか。特にホームゲームの集客については今まで以上に努力をしてほしいと、各チームにお願いしました」

 そもそもVリーグがホームゲーム方式を取り入れた際には、各チームが努力して集客数を伸ばし、その入場料収益を県協会だけではなくチームにも還元しようという目標を掲げていた。ところが現状では主管である県協会と、チームが受け取る利益の内訳は都道府県やチームによってバラバラで、その金額も明らかにされていない。
 収益と集客率の向上という当初の目的が果たせない理由について、あるチーム関係者はこう話す。
「ホームゲームで挙げられる収益は1シーズンで数百万円程度。(母体企業にとって)たった数百万円の収益があったところで、現状では、それを会社に計上する名目やシステムがないんです」
 ほとんどのチームの、母体企業内での位置付けは広告宣伝や福利厚生といった「経費」扱いだ。経費を使うべき部署が収益を上げても「会社への報告に困る」と本音を漏らすチームも存在する。しかし、それではいつまでたっても収益や集客を増やそうという意識は育たない。
「確かに何兆円を売り上げる一流企業にとってはたかが数百万円かもしれません。でも、およそ3億円と言われるチームの年間予算の中では貴重な金額になるでしょう。宿泊費や他の移動経費に充てるなど方法はいくらでもあるはず」とVリーグ機構の梅北理事は言うが、そのシステム作りに対しては各チームともまだまだ消極的だ。

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著者プロフィール

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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