リーグ“再生”を目指して バレーボール、Vリーグのこれから
試合数を減らせば、経費は減る?
パナソニック・パンサーズの南部正司監督は語る。
「景気が回復するまでの間だけでも、せめて本拠地である大阪から移動距離の少ない土地での開催ができないかと部長を通じて提案しました。同時に、今までは開催地への移動を木曜日に設定していましたが、宿泊費を削減するために金曜日にしてはどうかということもチームの意見として話してあります」
各チームとも母体企業から2〜3割程度の経費削減を通達されているようだが、強化合宿を見送ったり、新規に雇用する選手を減らしたりとさまざまな工夫で乗り切ろうとしている。その上で、ではVリーグというひとつの団体には何ができるのか。移動経費の削減はこうした団体としての課題で、基本問題検討委員会では各チームの提案をまとめ、優先順位をつけてひとつひとつ解決していく方針だという。
同時に緊急課題として、同委員会ではチーム側から「来期だけでも試合数を減らして、移動費を浮かせてはどうか」という声が上がった。しかし男子の場合、8チームによる4回戦総当たりという日程は昨シーズンと同じ。28試合制を続ける理由についてVリーグ機構の梅北理事は続ける。
「確かに試合数を減らせば経費として使うお金も減るでしょう。その代わり露出も減って、企業がバレーボール部を持つ意味さえぐらついてしまいます。試合が少ないなら選手もこんなにいらないんじゃないか、道具もこんなに必要ないんじゃないか、練習時間もこんなにいらないと、どんどん縮小の傾向に陥って発展とは逆の道を進むことになります。バレー部が企業にとってますます必要のない遊休機関になってしまっては、自分で自分の首を絞める危険もある」
そもそもVリーグが試合数を増やす等、数々の改革を進めたのは、企業チームが最も危機にさらされた1990年代後半から2000年初めのことだった。チームがどんどん消えていく中で、だからこそ試合数を増やし、ホームゲーム方式によって自分たちで収益を上げ、企業からの自立を試みたのである。ところが、年月がたつうちにその結束が徐々に弱まっていった。母体企業の人事異動などで、当時の危機感や並々ならぬ決意を知る人材がバレーボール部を去らなければいけなかったことも、改革が進まない要因となっている。
「Vリーグ基本問題検討委員会を発足したのは、もちろん解決策を話し合うためですが、同時に90年代後半、このままではダメだと皆で立ち上がり、必死になったときの心境を思い出して、もう一度気持ちをひとつにしたいという願いが込められています」(梅北理事)
「客商売」である自覚 チームと地域ができる努力とは何か
「最近では休部になったアイスホッケーチームやアメリカンフットボールチームなどから運営の方法を学びたいと訪ねてくる人がいます。ただ、わたしたちがクラブ化して9年たちますが、バレーボール関係者から何かを聞かれたことは一度もありません」
集客の悪さをVリーグ機構に指摘され、「ホームチームが弱いからだ」とチームに矛先を向ける県協会や、ファンの待つ場所を避け、逃げるように移動バスに乗り込む選手。そしてファンサービスを渋る選手を、とがめることができない首脳陣やスタッフなど、およそ「客商売」である自覚が足りない者がいまだ多いのも否めない。
バレーボール競技が国内で生き残るためには、バレーボールに携わるすべての人の意識改革が必要である。NECからサントリーへ移籍した金子隆行は言った。
「選手にできることは、とにかくバレーボールで結果を出すことだと思います。自分は成績が悪かったために、休部を検討している企業に対して“残してください”と言うことができませんでした。結果を出しても、もしかしたら、不況のせいでチームがなくなるのを止めるのは難しいかもしれません。でも“あのとき、もっと頑張ればよかった”という後悔だけは二度としたくないんです」
基本問題検討委員会では今後も話し合いを続け、決まったことを随時、発表していくという。Vリーグの開幕は11月。最重要課題だという集客力アップに向けて、機構と各チームの動向に注目したい。
<了>