全米一の野球都市・セントルイスで球宴開催=プホルスは地元で爆発するか?
セントルイスで43年ぶりの開催
カージナルスの本拠地、ブッシュ・スタジアムで第80回オールスターゲームが開催される 【Getty Images】
47年、ドジャースから近代MLB初のアフリカ系メジャーリーガーとしてジャッキー・ロビンソンがデビューしたとき、当時の16球団でもっとも南に本拠地を置き、人種差別の激しい深南部(ディープサウス)から訪れる観客も多かった影響から、カージナルスは当初ドジャースとの対戦をボイコットする動きを見せた。実際に、ロビンソンに対してラフプレーが仕掛けられたり、観客席からも激しい人種差別的なやじが飛ばされるなど、球団、選手、ファンに激しい拒絶反応があった。
それから半世紀を経たことし、その同じ地で、米国史上初のアフリカ系大統領となったバラク・オバマが始球式のマウンドに立つ。
もっとも野球熱の高い都市
カージナルスは1920年代、後にドジャースでロビンソンの登用に踏み切った名GMブランチ・リッキーがスカウト網やファームシステムの充実に努めた。これが功を奏し、26年、ロジャーズ・ホーンスビー監督兼二塁手のもと、ナ・リーグ加盟以来初のリーグ優勝を遂げ、ワールドシリーズでもベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグを擁するヤンキースを4勝3敗で下して、最初の世界一に輝いた。一方のブラウンズはア・リーグの万年ドアマット球団だったものの、20年には強打者ジョージ・シスラーが、イチロー(マリナーズ)に破られるまで長くメジャー記録だった年間257安打を達成している。
セントルイスの人口約35万人は、MLB30球団の本拠地としては最小の部類だが、バドワイザービールで知られるアンハイザー・ブッシュ社など世界的企業が本社や工場を置き、また合衆国のほぼ中心に位置して鉄道、高速道路、水運で交通の要衝でもあるため、300万人近い周辺人口を誇る。
カージナルスのほか、NFLラムズ、NHLブルースのフランチャイズでもあるが、2006年までにナ・リーグ球団最多のワールドシリーズ優勝10回を誇るカージナルスは、地元のプロスポーツ人気で圧倒的な地位を占めている。
ブッシュ・スタジアムでの試合開催日には、市内を南北に走る都市交通鉄道「メトロライン」の車内や球場へ向かう道路は、カージナルスの赤い帽子やTシャツで埋め尽くされ、満員のスタンドは“Red Sea(真紅の海)”とも形容される。
注目は何と言ってもプホルス
地元開催で活躍に期待がかかるカージナルスのプホルス 【Getty Images】
そのミュージアルの域に達しつつある現在のアルバート・プホルスは、7月8日現在、31本塁打、82打点でナ・リーグのトップを走り、打率も2位の3割3分6厘とし、デビュー以来期待され続けている三冠王の可能性を高めている。2002、07年を除き、01年のデビューから出場を続けているオールスターでの通算成績は、6試合で14打数6安打、打率4割2分9厘、3打点だが、ホームランはまだ出ていない。
現在のMLBにおけるもっとも「完璧な打者」プホルスが、1997年以来11敗1引き分けと長い連敗を喫しているナ・リーグに、そのバットで勝利をもたらすことができるか、大いに注目される。勝てばナ・リーグの優勝チームにワールドシリーズでのホームフィールド・アドバンテージ(第1・2戦、第6・7戦の本拠地開催権)が与えられるだけに、06年以来のシリーズ出場をめざすプホルスとカージナルスにとって、ことしのオールスターゲームは決して「お祭り」ではない。
<了>
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