豊田清ブログに見る衣笠祥雄の鉄人魂=山田隆道のブログに茶々々!

山田隆道

クローザーへの闘志をぎらつかせる豊田

 西武時代、特に2002〜03年ごろの豊田清はまさに絶対的守護神だった。キレのあるストレートと懸河のごとき落差を誇るフォークボールを武器に、パリーグの並みいる強打者たちにつけいるすきさえ与えなかったと記憶している。
 ところが、05年オフにFAで巨人に移籍して以降、失礼ながら随分と影が薄くなった気がする。移籍当初は巨人でもクローザーを期待されていたが、寄る年波のせいか、失敗が目立つようになり、昨年からは守護神の座をクルーンに完全に明け渡してしまった。僕はそんな豊田の現在の心境を読み取るべく、彼のブログをチェックした。

 最初に気になったのは「続・絶対的守護神への道」という公式サイトのタイトル。さらに4月13日の記事も見逃せない。リリーフが次々に登板し、クルーンにつなぐまでは絶対に打たれてはいけないという切迫した試合にリリーフ登板した豊田。その感想として「マウンドに上がる時、『オレしかいない! 2イニング抑える』と胸に誓いました」や「投げている最中は抑えをやってる気分でした!? 久しぶりの感覚!」などとつづっているのだ。
 平たく言うと、豊田はまだまだあきらめていないのだ。決して現在のセットアッパーというポジションに甘んじているわけではなく、38歳になった今もなお、往時の輝きと絶対的守護神の座を取り戻そうと闘志をぎらつかせているように思えてならないのだ。

鉄人・衣笠氏と同じにおい

 それを証拠に3月9日のブログでは、「自分の可能性を信じて、絶対にあきらめないことが大切である」といったメッセージを発信している。これを読んでも、豊田という投手が今も必死で前進しよう、成長しようと、もがき苦しんでいることが伝わってくる。
 そう言えば、かつて世界の鉄人・衣笠祥雄氏が「引退する直前まで、明日になったら野球がもっとうまくなるかもしれないと思いながら練習していた」と語っていたことを思い出した。あれほどの大選手が普通なら衰えて当たり前の40歳になって、なおも「明日野球がうまくなるかもしれない」って野球少年みたいなキラキラしたせりふを普通に言っちゃうわけだ。けだし名言である。大げさかもしれないが、僕はそんな衣笠氏の鉄人魂と同じにおいを豊田にも感じた。

 失礼を承知で乱暴な表現をすると、現在の巨人首脳陣が38歳の豊田に往時の働きを期待しているとは思えない。それがベテラン選手に対する常識的な評価だろう。しかし、そんな常識にとらわれず、豊田本人にはこれからも「絶対的守護神への道」をあきらめないでもらいたい。もしかすると、明日になったらボールがもっと速くなるかもしれない、制球がもっと良くなるかもしれない、変化球がもっと切れるかもしれないのだから。

※毎週、火曜日更新

<了>
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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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