IBO・S・ライト級タイトルマッチ マニー・パッキャオ対リッキー・ハットン

ボクシングライター 原功

マニー・パッキャオ 【(C)NAOKI FUKUDA】

 THE BATTLE OF EAST AND WEST――1万5000人超のキャパを持つMGMグランドガーデンのチケットが、試合2週間前に売り切れになったほどの人気カードだ。フィリピン出身のパッキャオ、イギリスはマンチェスター出身のハットン。イベントのコピーは東西対決を強調しているが、このふたりの人気と知名度はそんな狭いエリアには収まりきらない。

 数年前まで、このカードが組まれることを何人の人が予想しただろうか。もともとフライ級のパッキャオがいきなりS・バンタム級にクラスを上げて戴冠。さらにフェザー級、S・フェザー級と上げたときでさえ、彼が140ポンド(約63.5キロ)のS・ライト級で戦うことは考えられなかったはずだ。ましてや、147ポンド(約66.6キロ)契約でオスカー・デラ・ホーヤ(米)と戦うなどとは。

 その一戦で世界中を驚かせたパッキャオが、今度は一階級落としてハットンと拳を交える。

オッズではパッキャオ有利だが…

リッキー・ハットン 【(C)NAOKI FUKUDA】

 この試合を占う際、まずひとつのカギがこの体重の増減にあるといっていいだろう。デラ・ホーヤ戦でいったん増量したパッキャオが、どんなコンディションでリングに上がるのか、まずはその点に注目したい。S・フェザー級時代から普段60キロ台後半の体重があったというパッキャオだが、30歳で迎える体重の増減がどんな影響を及ぼすのだろうか。

 両者の戦闘スタイルは「攻撃的」という点では一致するが、異なる面は多い。

 サウスポーのパッキャオは鋭い踏み込みと左ストレートの伸び、破壊力に加えフィジカル、メンタルの強さを誇る。数々の激闘で予備タンク付のスタミナも証明済みだ。フレディ・ローチ・トレーナーとの信頼関係も揺るぎない。最近はクラスを上げたためにリスクを抑える必要性を感じてか、ステップワークを多用する傾向が見られる。年齢とクラスを上げるごとに、強さに巧さがプラスされてきたといえるだろう。

 一方のハットンは右構えの連打型ファイターだ。忙しく体を上下左右に移動させながら間合いを詰め、飛び込んで左右の連打を上下にまとめる戦闘スタイルを持つ。典型的な連打型ファイターといっていいだろう。それでいてカルロス・マウサ(コロンビア)やホセ・ルイス・カスティージョ(メキシコ)を仕留めたように、一発の破壊力もある。昨年11月のポール・マリナッジ(米)戦では、激しく動く相手を縦横無尽の動きで追い込んでみせるなど、こちらも仕掛けが巧妙になっている。

 実績も知名度も十分すぎるほどの両者だが、4月22日現在のオッズ(賭け率)は13対5でパッキャオ有利と出ている。
 たしかに攻撃的なサウスポー・スタンスに若干のアドバンテージは認めざるをえないが、しかし、パッキャオにとって今回の試合は数字ほどの優位性はないとみる。なにより、短いリズムで刻むハットンの攻めの間合いが“パックマン”に大きな戸惑いを与えると思うからだ。体を寄せてから放つ左のボディブローも左構えのパッキャオには対しては有効と思われる。

 パッキャオが左ストレートを突き刺すタイミングを先につかむか、それともハットンが上下の連打を叩き込む間合いと空間を先につくるのか――序盤から速いテンポのパンチの交換がみられそうだ。

S・ライト級トップ戦線の現状

WBA:アンドレアス・コテルニク(ウクライナ)
WBC:ティモシー・ブラッドリー(米)
IBF:ファン・ウランゴ(コロンビア)
WBO:ケンドール・ホルト(米)

 戴冠から多くの時間が経っていないからだろう、チャンピオンたちの顔ぶれを見るとやや地味な印象は拭えない。しかし、いずれも高い潜在能力を持ったメンバーである。五輪銀の実績を持つコテルニク、卓抜した運動能力を誇るブラッドリー、そして強打のウランゴ。統一戦で拳を交えると、どの組み合わせも面白い勝負になるはずだ。

 こうした戴冠者をよそに、このクラスを熱くしているのはマニー・パッキャオ(比)、リッキー・ハットン(英)、そしてコテルニクに挑戦が決まったアミール・カーン(英)、さらに米国の新鋭ビクター・オルティス、南米の怪物マルコス・マイダナ(亜)といった選手たちだ。

 彼らの近い将来のターゲットが、シェーン・モズリー(米)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、アンドレ・ベルト(米)、戦線復帰が確実視されるフロイド・メイウェザー(米)といったウェルター級のスター選手であることも付記しておきたい。

WOWOW「エキサイトマッチ」

“パックマン”vs“ヒットマン”究極のファイター対決!

<放映日時>
191ch:5月3日(日)11時〜独占生中継!
191ch:5月7日(木)よる9:00(再放送)
193ch:5月9日(土) 深夜0:45(再放送)
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