もう誰も北岡悟を無視することはできない
五味とベルトを懸けて対戦する北岡(写真は8.24戦極) 【t.SAKUMA】
11月1日、戦極ライト級GP決勝トーナメント準決勝では“ヨアキム・ハンセンに勝った男”光岡映二を秒殺。その勢いで決勝では第3代DEEPライト級王者・横田一則をスピードと手数で圧倒してGP王者になった、いま最も勢いを感じさせる総合格闘家だ。
キャッチコピーは″キモ強″。キモくて(気持ち悪くて)強い、あるいはキモいのに強いの略語である。
ハードボイルドに決め込んだ入場シーンや勝利後の自己陶酔に浸る恍惚の表情を目撃したら、誰だってそのコピーに納得するだろう。北岡本人は気に入らない様子だが、パンクラスの大先輩で北岡が師のひとりとして慕う鈴木みのるは進言した。
「今までそう言われた奴はいないんだから、お前の勝ちだと思う。どうせだったら観客に大好きと大嫌いというふたつの感情を抱かせた方がいい。どうでもいい、なんとなく好きより、そっちの方が認知度は圧倒的に上なんだからさ」
モンテイロ戦で見せた神がかり的な強さ
07年4月のDEEP後楽園で北岡(左)はモンテイロを肩固めで下す 【田栗かおる】
2000年10月のデビュー戦は判定負け。2戦めこそ白星を飾ったものの、その後は白星や黒星より引き分けが目立つ選手だった。
そんな北岡がようやく表舞台に出てきたのは2007年のことだった。グスタボPC、ファブリシオ・モンテイロというブラジルのビッグネームを連破し、自らの実力でPRIDEライト級GPへの出場切符を掴んだのだ。
中でもモンテイロ戦で見せた神がかり的な強さは印象深い。身長やリーチの差など、関係なし。スタンドでもグラウンドでも北岡はモンテイロを圧倒していた。練習仲間である青木真也も07年に最も印象深かった試合として北岡VSモンテイロ戦をあげている。
しかし、その後PRIDEは完全に活動を停止したため、ライト級GPが開催されることはなかった。今年1月にはホームであるパンクラスでタイトルマッチに挑んだが、判定負け。06年1月(この時はドロー)に続いてタイトル奪取のチャンスを逸してしまった。いずれのタイトルマッチも対戦相手は井上克也で、06年5月には他の日本人選手にも苦杯を喫しているため、「タイトルマッチや日本人には弱い」という厳しい見方をする識者もいた。
栄光まであと一歩というところまではいつも進むことができるものの、土壇場で運に見離されてしまう。プロ、アマに限らず勝負の世界で、そういう選手がごまんといる。今年1月のタイトルマッチまでの北岡だったら、そういう評価を下されても不思議ではなかった。だが、圧倒的な強さで戦極ライト級GPを制覇することで、北岡は過去のマイナスイメージを全て払拭した。
ポイントは5分5ラウンド
五味(右)との決戦は、いかなる結末を迎えるのか 【t.SAKUMA】
今回のタイトルマッチのポイントは、試合時間が5分5ラウンドという長丁場で設定されていることだろう。このところ日本のMMAの試合時間は5分3ラウンド(or2ラウンド)、あるいは1ラウンド10分、2ラウンド5分といういわゆるPRIDEルールで組まれることが多い。そんなパターンの試合を見慣れているファンにとって、UFCのタイトルマッチのように5分5ラウンド制の試合は新鮮に映るだろう。
選手にとっても、試合が5ラウンドあるとおのずと作戦の立て方も違ってくる。場合によってはスタミナの配分も考えなければならないだろう。北岡がタイトルを奪取する第一条件は自分のペースで試合を進めること。自分のペースだったら、必要以上にスタミナが切れる心配はない。ただ、勝負が持久戦になって未経験の4ラウンド突入後いきなり失速ということになったら洒落にならない。
11月中旬からは大好きなケーキも断って、北岡はコンディション調整に励んだ。もうキモ強というキャッチコピーも必要ないかもしれない。
もう誰も北岡悟を無視することはできない。
月刊FUSE通信
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●戦極
■番組名:戦極の乱 1.4さいたま大会
■放送日時:1月4日(金)16:00〜(生中継)ほか
■放送チャンネル:スカチャン Ch.162(スカパー!)、スカチャンHD191(スカパー!)、スカチャンHD800(スカパー!e2)
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