ウオッカ、歴史的勝利! 64年ぶり牝馬ダービー制覇だ=競馬=「歴史に残る馬」四位が殊勲のエスコート

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角居調教師、谷水オーナーの英断

3歳馬8470頭の頂点に立ったウオッカ、秋には凱旋門賞への挑戦が期待される 【スポーツナビ】

 一方、オークスには目もくれず、ウオッカをダービーに出走させた角居調教師と谷水雄三オーナーの英断も忘れてはいけない。
 ウオッカはデビューする2日前の昨年10月27日に5大クラシック(皐月賞、日本ダービー、菊花賞、桜花賞、オークス)への登録を完了。この時のエピソードを角居調教師は「調教で動いていますってオーナーに報告したら、『クラシックへの登録を済ませておけ』と言われて、2つ(桜花賞、オークス)ですか?って尋ねたら、『5つ全部だ』って返事が返ってきた(笑)」と語った。
 デビュー前からすでに、谷水オーナー、角居調教師ともにウオッカのずば抜けた素質を見抜いていたのである。

角居調教師(右)のチャレンジングスピリットが64年ぶりの快挙を手繰り寄せた 【スポーツナビ】

 また、先週の3歳女王決定戦・オークスに出走していれば間違いなく好勝負になったはずだが、それを蹴ってのダービー挑戦。ましてや前走の桜花賞で2着に負けているだけに、周囲の雑音や批判もあっただろう。
 だが、厩舎一丸となってウオッカの能力を信じ、馬を極限にまで仕上げきった。そして、歴史的な3歳頂点の座を手に入れたのだ。
 「僕は特に何もしていないし、馬を壊さないようにと思って調整してきただけ。馬が強かったです。こんなに強い牝馬にめぐり合えて感謝しています。ウオッカに感謝しています」
 トレーナーは“感謝”という言葉を何度も繰り返し、ウオッカに最大限の賛辞を送った。

広がる夢……秋にはフランス凱旋門賞挑戦も

今後のローテーションは未定だが、凱旋門賞への挑戦も視野に入っている 【スポーツナビ】

 そして、「こんな無謀な挑戦に賛成してくださったオーナーにも本当に感謝しています」と角居調教師。どれだけ調教師が挑戦しようと思っても、オーナーが首を縦に振らなければ絵に描いた餅でしかない。角居調教師とスタッフ、そして最後にGOサインを出した谷水オーナーのチャレンジングスピリットが、64年ぶりの歴史的快挙を引き寄せたのだ。

 牝馬ながら3歳世代のチャンピオンとなったことで、ますます夢が広がるウオッカ。昨年にディープインパクトが挑戦した世界芝ナンバーワン決定戦・凱旋門賞への登録もすでに済ませてある。
 「宝塚記念は日程的にかわいそうかなと思いますが、それ以降のローテーションはオーナーとこれから話し合おうと思っています。もっと良くなっていく馬だと思いますからね」(角居調教師)
 このまま無事に行けば、秋にはフランス・ロンシャン競馬場の大舞台に立っている可能性は十分ある。この春、日本の競馬シーンを酔わせたウオッカが、今度は世界のホースマンを心酔させるか。

ホウオー、ヴィクトリーともに能力発揮できず

1番人気フサイチホウオー(手前)は能力を発揮しきれず7着敗戦 【スポーツナビ】

 一方、1番人気に支持された安藤勝己騎乗のフサイチホウオー(牡3=松田国厩舎)は最後の直線での伸びを欠き、7着に敗れた。

 これまで東京競馬場では無敗を誇ってきたフサイチホウオーが、最後の直線でもがいている。まさかの光景だった。
 「スタートがすごく良くて、1コーナーで行きたがっちゃった。あそこで位置を下げると後ろまで行っちゃうし、そのまま馬に任せて行ったんだけど」と安藤勝。向こう正面では早めにポジションを上げ、4コーナーでも十分に勝負圏内にいたが、そこからいつもの末脚が繰り出せない。結局、最大の武器としていた伸び脚を発揮できないまま、勝ったウオッカから1秒遅れてのゴールだった。
 アンカツは直線の攻防を振り返り、「いつものように上がっていく感じではなかった。追い出してからもいつもの反応じゃなかったし、もうひと伸びしてくれれば……」と無念の表情を浮かべた。

 父ジャングルポケットのように皐月賞3着からのリベンジを果たすことはできなかったフサイチホウオー。道中、折り合いを欠いたことが敗因だったか。だが、潜在能力が世代トップクラスであることは誰もが認めるところ。秋シーズンでの完全復活を待ちたい。

 また、二冠制覇を目指した皐月賞馬ヴィクトリーは、前走のような先行粘り脚を見せられず9着。
 「出遅れがすべてでしたね。後ろからの競馬をしようと腹をくくったんだけど、1、2コーナーで前の馬との間隔がスッと離れて、前に壁がなくなったら行きたがっちゃった」と手綱をとった田中勝が振り返ったように、皐月賞とは打って変わったチグハグな競馬が敗因。大きな課題が残る敗戦となった。

<了>

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