SP首位の無良、示した確かな存在感 課題克服に必要な「一番になる気持ち」
12回目の出場にして初の首位ターン
男子最年長として大会に挑んだ無良崇人が、初めてSP首位発進を果たした 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
過去の最高成績は3位。優勝はおろか2位にも届いていない。そんな彼に千載一遇の機会が訪れた。23日に行われたショートプログラム(SP)で90.34点をマークし、首位スタートを切ったのだ。冒頭の4回転トウループをなんとかこらえて着氷すると、続くトリプルアクセルは高さのあるジャンプで1.86点の加点を得る。3つめのジャンプは3回転ルッツの予定だったが、最初の4回転トウループにつけられなかった3回転トウループを加えて、コンビネーションにするなどリカバリーにも成功した。
「(11月の)フランス杯のSPが頭の中に残っていました。そのときは動き自体は悪くないのに転倒したし、ステップでは動けなくなって、演技が小さくなってしまった。そこからSPは練習を積んできて、ステップなんかは前より1.5倍くらい注意する部分を増やしています。その成果を今回出せたことはうれしく思います」
ステップはレベル3だったものの、音を刻むような足の動きは観客を魅了した。昨季から改善を図っているステップは徐々に強みとなりつつある。全日本のSPを首位で終えるのは初のこと。24日に行われるフリースケーティング(FS)への期待も高まってくる。
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長年にわたり克服できない課題
彼は、こうした状況を冷静に受け止めていた。
「昌磨はステップアウトと転倒があって88点、僕はミスがなくて90点なので、まだまだ及ばない部分があると感じました。でも(前の試合までの)嫌なイメージは払拭(ふっしょく)して全日本をスタートできたので、あとはFS勝負かなと思っています」
SPとFSの演技を2つ完璧にそろえること。それが長年にわたり克服できない彼の課題だ。もちろん、それはどんなスケーターにとっても簡単にできることではない。しかし、トップを走る選手たちは悪いなりに、きちんと演技をまとめて、点数を出してくる。最高と最低の振り幅は小さい。だからこそ安定した成績を残せる。
一方、彼はその振り幅が大きい。良いときは世界でもトップクラスの演技を披露するが、悪いときは普通の選手に成り下がる。今季のグランプリシリーズでもその悪癖が顔をのぞかせた。スケートカナダではSPを2位で終えながら、FSで8位まで落ちた。フランス杯ではSP6位から、FSで順位を1つ上げている。やはり2つの演技をしっかりとそろえることができなかった。