妥当な結果に終わったエル・クラシコ バルセロナの消極性が招いた同点弾 

後半ATまでリードを保ったバルセロナだったが……

クラシコは試合終了間際に生まれたセルヒオ・ラモスの同点弾により、1−1の引き分けに終わった 【写真:ロイター/アフロ】

 カンプノウで12月3日(現地時間)に行われた第14節の“エル・クラシコ”(伝統の一戦)では、これまで何度もファイナルで重要なゴールを決めてきたセルヒオ・ラモスの頭から生まれた土壇場の同点弾により、リーガ・エスパニョーラの首位を走るレアル・マドリーが理想的な状況をキープすることに成功した。

 この一戦はバルセロナにとって大きなチャンスだった。この日もレアル・マドリーが築いた守備ブロックを突破する後押しとなるような戦術やシステムの工夫は見られず、ケイロル・ナバスが守るゴールマウスにたどり着くすべを見いだすことはできなかった。それでも、セットプレーのポジション争いの際、コンマ何秒の差でラファエル・バランに対して先手を取ったルイス・スアレスが豪快なヘディングシュートを決めたことで、後半アディショナルタイムまでバルセロナはリードを保つことができていたのだ。

 チェスのような戦略的つぶし合いに終始したことで、バルセロナはプレーの創造性を欠き、ボールとのコンタクトを求めるリオネル・メッシが極端に低い位置まで下がってプレーすることを強いられた。一方のレアル・マドリーも右サイドのルーカス・バスケスがマテオ・コバチッチ、ルカ・モドリッチ、イスコとともに中盤での守備に従事したため、前線でクリスティアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマが孤立。彼らはほとんどプレーに関与できなかった。

モドリッチの好調ぶりが際立つ結果に

守備から攻撃にスイッチする際のつなぎ役として、モドリッチ(右)は重要な役割を果たした 【Getty Images】

 この引き分けが、バルセロナよりレアル・マドリーにとって有利な結果であることは明らかだ。第13節終了時点で勝ち点6のアドバンテージを得ていたことに加え、レアル・マドリーにはタイトル争いを左右するであろうシーズン終盤の再戦をホームのサンティアゴ・ベルナベウで戦えるという利点もある。

 レアル・マドリーも重要な存在であるガレス・ベイルとトニ・クロースをけがで欠いたが、それ以上に不在の影響を感じさせたのは、けが明けでベンチスタートとなったバルセロナのアンドレス・イニエスタだった。

 本コラムでこれまで指摘してきた通り、ロス・ブランコス(レアルの愛称)のプレーはシステムを重視しないシンプルな構造で成り立っている。その傍ら、ジネディーヌ・ジダン監督は選手たちに全幅の信頼を寄せることで、チームが背負うプレッシャーを軽減し、落ち着いてプレーに専念できる環境を作り上げてきた。

 今回のクラシコで最も際立ったのはモドリッチの好調ぶりだ。中盤から前線に至る部分ではパスの受け手が不足していたものの、彼は守備から攻撃に切り替える際のつなぎ役として極めて重要な役割を果たしていた。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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