バルセロナが抱える3つの不安要素 クラシコは優勝の行方を占う大一番に 

スタイルを見失いつつあるバルセロナ

現在のバルセロナはメッシ(右)の一挙手一投足に左右され、スアレス(左)の驚異的な得点力にも依存しすぎている 【写真:ロイター/アフロ】

 フットボール界が待ち望む“エル・クラシコ(伝統の一戦)”が行われる今週末、バルセロナは首位を走るレアル・マドリーとの勝ち点差を縮める絶好のチャンスを迎える。リーガ・エスパニョーラの優勝争いにゆっくりと別れを告げ、まだ半分以上もあるシーズンに残された希望を早い段階で失いたくなければ、彼らは見失いつつある自分たちのフットボールをこの試合で取り戻さなければならない。

 アウェーのアノエタでレアル・ソシエダに圧倒された第13節(結果は1−1の引き分け)のようなプレーを繰り返すようであれば、バルセロナがレアル・マドリーに勝てる可能性はごくわずかだろう。問題は何年も未勝利が続いている彼の地への苦手意識だけではない。

 現在のバルセロナはリオネル・メッシの一挙手一投足に左右され、もしくはライバルのミスを逃さずゴールを生み出してしまうルイス・スアレスの驚異的な得点力に、無条件に依存しすぎてしまっているのだ。

 バルセロナが前述のレアル・ソシエダ戦で見せたパフォーマンスからは、少なくとも3つの重要な問題点を挙げることができる。

 1つは、負傷離脱中のアンドレス・イニエスタがバルセロナのプレーの根本を支える選手であること。2つ目は、攻撃が手詰まりに陥った際に選手たちに打開策を提供できるようなシステムをルイス・エンリケ監督が見いだせていないこと。そして3つ目は、試合を見るたびに大きな喜びを与えてくれた黄金期とはかけ離れたチームになってしまったことだ。

イニエスタの不在が大きく響く

イニエスタ不在の影響が大きいバルセロナ。クラシコでもイニエスタの復帰は難しいだろう 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 決戦に向けた不安要素としては、やはりイニエスタの復帰が難しそうなことだろう。もし出場したとしても、1カ月近くも戦列を離れていた彼はまだ実戦のリズムを取り戻せていないと思われる。アルバセテ(カスティーリャ・ラ・マンチャ州の県)が生んだクラック(名手)はバルセロナにとってあまりに重要な存在だ。

 現在のバルセロナは前線のメッシ、スアレス、ネイマールによる南米トリオが中心のチームであり、以前より中央からの攻撃を仕掛けるスタイルに変わってきてはいる。それでも、イニエスタの不在時はメッシがより低い位置でプレーしながらネイマールやスアレスにパスを供給する役割を求められるため、相手ゴールに近い位置で自由に攻撃を組み立て、チャンスメークやフィニッシュに絡む機会が減ってしまう。

 レアル・ソシエダ戦ではイニエスタと同レベルのMFはもちろん、彼と同様の役割をこなせる代役がいないことがあらためて露呈された。少なくとも現時点では、この試合で先発したアンドレ・ゴメスよりアルダ・トゥランやラフィーニャの方が適任であることは分かった。より高い位置でセカンドストライカーとしてもプレーできるアンドレ・ゴメスは、今季ここまでインサイドMFに加え、セルヒオ・ブスケッツが務める中盤の底でも起用されている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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