バルセロナが抱える3つの不安要素 クラシコは優勝の行方を占う大一番に 

ディフェンスラインにも問題を抱える

マスチェラーノはクラブと代表で異なるポジションでプレーしており、その代償を払っている印象を受ける 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 バルセロナが抱える問題は中盤の構成力だけでない。

 ディフェンスラインも過去数シーズンと比べて安定感が失われつつある。ハビエル・マスチェラーノはベストの状態になく、クラブではセンターバック、代表ではボランチと、異なるポジションを任されている代償を払っている印象を受ける。

 GKマルク・アンドレ・テアシュテーゲンへのバックパスはいら立たしいほど繰り返され、彼とジェラール・ピケの意思疎通はかみ合わず、サイドバックのセルジ・ロベルトとジョルディ・アルバは思うように攻撃参加できていない。結果としてチームは攻撃のバリエーションを失い、個々のパフォーマンスも懸念すべき状態に陥っているのだ。

 レアル・ソシエダ戦後のフラッシュインタビューで、ピケは「このままではリーグ優勝を狙うのはかなり厳しい」と率直に話していたが、彼の言うことは正しい。アノエタで見たバルセロナは望むべきレベルからは程遠く、過去数シーズンの対戦時のように完敗していておかしくない内容に終始しながら(レアル・ソシエダは何度も決定機を作っており、76分にはフアンミが勝ち越しゴールを奪ったかに見えたが、オフサイドと判定されゴールは認められなかったシーンもあった)、一時も打開策を提示することができなかったのだから。

レアル・マドリーも磐石とはいえないが……

ベイル(左から2番目)は欠場の可能性が高いが、レアル・マドリーには代役となるべきアタッカーが多く存在する 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一方のレアル・マドリーも、バルセロナを遥かに上回るプレーを見せているとは言い難い。先週末もサンティアゴ・ベルナべウでスポルティング・ヒホンを下すのに苦労し(2−1)、決めれば同点とされていたPKまで与えてしまったくらいだ。

 ただレアル・マドリーには近年、バルセロナのような確固たるプレースタイルやプレーメーカーが存在しなかった。このチームのフットボールはピッチに立つ選手たちによって形作られてきたもので、監督はロッカールームで物事がスムーズに運ぶよう手回しをするだけでよかった。クラブ、代表を合わせて今季最も決定的な役割を果たしてきたガレス・ベイルは、けがのため欠場する可能性が高いが、豊富な戦力を擁するレアル・マドリーには代役となるべきアタッカーが多く存在する。

 対照的に、バルセロナには替えのきかないクラックが何人もいる。戦力バランスのとれたレアル・マドリーと比べ、バルセロナはオフに新戦力を多数補強したにもかかわらず、各ポジションを十分にカバーできていない。これは今季の両チームを隔てる大きな差である。

 アウェーのカンプ・ノウから無傷で生還することができれば、レアル・マドリーは早くもリーグ優勝への道のりを開き始めることになる。このような機会は滅多にないことだ。まだ先は長いとはいえ、今回のクラシコが今季の優勝争いを占う上で重要な要素となることは間違いない。

 バルセロナはこの直接対決で極めて重要な勝ち点3を争うことになる。1試合の勝利でバルセロナを取り囲む疑念が取り払われるわけではない。それでもこの試合でライバルをたたくことができれば、両者を隔てる勝ち点差を縮めるだけでなく、まだ自分たちにタイトルを争える力があることをあらためて証明することもできるはずだ。

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント