「中盤のモーター」と称される小林祐希 攻守に奮闘、代表復帰にも意欲をみせる

中田徹

PSVを抜いて3位に浮上

小林祐希の所属するへーレンフェーンはリーグ3位に浮上した(写真は10月のPSV戦) 【VI-Images via Getty Images】

 ヘーレンフェーンとフローニンゲンの対決は、10年余り前から「オランダ北部ダービー」として知られるようになってきた。ヘーレンフェーンは現地時間10月15日に敵地へ乗り込み、この一戦で3−0とフローニンゲンを一蹴。得点数の差でPSVを抜いてエールディビジの3位になった。

 9月に入ってからヘーレンフェーンは攻守が噛み合い、直近5試合で4勝1分けという好成績を収めている。この間の得点数は13、失点は2だ。「それぞれ5ゴール、4ゴールを決めている(アルベル・)ゼネリと(サム・)ラーションの両ウイングが素晴らしい」という声もあれば「ヘーレンフェーンの中盤がかなり良い。見ていて面白い」という声もある。ユルゲン・ストレッペル監督はディフェンスの頑張りも見てほしいとたたえる。そうそう、GKエルビン・ムルダーの落ち着いたセービングも忘れてはならない。ウインガーのルシアーノ・スラーフヘーファー、ストライカーのヘンク・フェールマン、MFのユネス・ナミルとベンチに座る選手の頑張りも見逃せない。

「なんで今、このチームはこんなに良いんだろう。良いところをもっと伸ばしたい。別に良くないところがあんまり見当たらないというか……。若さでちょっとバタつく時間帯があるけれど、俺とスタイン(・スハールス、MF)がカバーできている」(小林祐希)

守備とセカンドボールの奪い合いに奮闘

 この日のフローニンゲンのフォーメーションは4−4−2だったが、サイドに攻撃力の高い選手を置いたため、4−2−4に近いシステムを採った。

「フローニンゲンはダイレクトプレーを多用するため、中盤でセカンドボールを拾うことが大事だった。ボールを奪ったら、(ヘーレンフェーンは4−3−3のため)中盤に“3対2”の数的優位がうちのチームに生まれていた」(スハールス)
 
 ヘーレンフェーンの中盤3人の中でリーダーはスハールス(32)だ。彼はインターセプトの回数、ボールタッチ数、パス本数でオランダリーグトップクラスを誇る元オランダ代表の名MF。ペレ・ファン・アメルスフォールト(20)は193センチという高さと走力を生かしたゴール前への飛び込みを得意とするが、最近はボールを持ったときの落ち着きが出てきた。そして、かつてPSVなどでプレーした解説者アーノルト・ブルヒンクが「中盤のモーター」と称した小林祐希(24)は、スハールスとファン・アメルスフォールトの間を埋める役割を担っている。ここ2試合は、スハールスと横並びに近いポジション取りをしながら、守備とセカンドボールの奪い合いに奮闘している。ヘーレンフェーンの中盤は若手、中堅、ベテランという意味でも非常にバランスが取れている。
 
 ヘーレンフェーンがフローニンゲン戦の7分に奪ったゼネリの先制ゴールは、カウンターから小林がセンターFWレザ・グーチャンネジャードへ縦パス→落とし→縦パス→落としとパスを交換し、さらに小林が左へ流れてフリーになったファン・アメルスフォールトへクロスを促すパスを供給したのが起点になった。ファン・アメルスフォールトのクロスからゼネリがシュートを決めた時、小林の姿はテレビの映像には映っていないが、実際は自陣からのスプリントでゴール前に走っており、カウンターの迫力を生んでいる。ゼネリを祝福する集団の傍ら、小林とグーチャンネジャードは抱き合って喜んでいたが、2人のフィーリングとプレーの実行が見事に一致したシーンだけに、それも理解できるというものだ。

「完全に(ゴールの)起点になった。ああいう起点になれるプレーを増やしていく。あの場面は相手の裏に蹴っても良かったけれど、そこをパスにしてマイボールにするというのが、うちのテーマだと思うので、そういう意味ではチームの良さとか、各個人の良さを引き出せているんじゃないかと思っています」(小林)

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント