小林祐希に芽生え始めた余裕と自信 PSVとの熱戦を終え、高揚感は鎮まらず
王者PSV相手にドロー
王者PSVをホームに迎えた一戦、ヘーレンフェーンは1−1で引き分けた。小林祐希は攻守に健闘 【Getty Images】
アディショナルタイムに入ってからベンチに下がるまで、90分以上にわたりセントラルMFのポジションで攻守に健闘した小林は「見ていて面白かったと思いますよ。これがハイクオリティーの試合。日本ではちょっと感じられない激しさだった」と語った。
先制点を奪ったのはヘーレンフェーンだった。後半27分、ハーフウェーラインから自陣寄りの位置でルーズボールをさばいた小林が、素早く右にいたペレ・ファン・アメルスフォールトへパス。さらにパスは右に流れていたセンターFWレザ・グーチャンネジャードへ渡り、グーチャンネジャードがクロスを送ると、中でアルベル・ゼネリが詰めてゴールを決めた。つまり、小林はファン・アメルスフォールトの“プレ・アシスト”をアシストしたことになる。
「(自分の役割が)ボランチだから、ああいうプレーが評価されるとうれしい。オランダでは、そういうのを見てくれている。オランダはアシストの前のパスとか、(ゲームの)作りでこういうプレーをした――というのを結構見てくれる国だと思いますので。あの場面で、慌ててヘディングでクリアとか、あるいはキーパーまで下げるといったプレーもいいけれど、それでは俺の持っているテクニックの意味がない。あそこであのプレーを冷静にできるというのは、(カップ戦も含めて)公式戦5試合目の余裕と自信。全てが前向きなんで、何回ミスをしても前へ前へという気持ちでやれていることにつながっていると思いますね」
スハールスから学んでいる「戦う姿勢」
スハールス(右)から、小林は「どんな時にも戦う姿勢」を学んでいるという 【Getty Images】
「勝てたなあ。(チームに)ちょっと若さが出たなあ。点を取って逆にバタついた。もっと(チームを)引き締めるタイミングがあったという後悔が残る。点を取った後、ちょっと守りに入ってしまったところが、俺の中での後悔。でも、他は悔いが残るプレーはしていない。PSVに点を取られて、もう1回ゴールを取りにいこうと前に出られたから、最後まで良い試合になった。全部、100%でやったので、自分にとってはプラスになることが多かった。ミスは多かったけれど、それは判断のミスであって、修正しやすい試合だったと思います」
ヘーレンフェーンのスハールスは、技術、戦況判断、戦う姿勢、経験、リーダーシップに秀でた素晴らしいMFだ。この夏、PSVからヘーレンフェーンに移籍してきた彼にとって、この夜の古巣との対戦は格別なものだったに違いない。そんなスハールスがテレビ局のインタビューに応えているのを横目で見ながら、小林はこう語る。
「彼(スハールス)が今日は一番、感極まっていたと思います。どんな時にも戦う姿勢――それを彼の横で学ばせてもらってます。俺はラッキーですよね。このタイミングで、何で彼がここにいるんだって。もっといいチームに行けたはずなのに、ヘーレンフェーンを選んだ。そんな彼にここで会えたのも、俺はすごく……。その彼をも(コーチングで)動かしちゃおうと思っている自分も成長している。そう自分では感じますけれど」
「チームが成長している」
後半アディショナルタイムまでプレーし、「すごい楽しいし、すごい充実感、やりきった感が今日はありますね」と小林 【Getty Images】
「チームが成長している」。そう小林は実感している。
「こうやってチームがいい状態で、若い選手が活躍してしまうと、逆に冬(の移籍市場)で出ていってしまうんじゃないかという不安がある。そういう不安との戦いでもありますけれど(苦笑)。いいチームになった時に誰かが抜ける。それはサッカー界の仕方がないところなんですけれど、このチームで俺は最後までやりたいなとあらためて思いました。すごい楽しいし、すごい充実感、やりきった感が今日はありますね」
PSVとの息詰まる熱戦を終えた小林の高揚感は鎮まることをしらなかった。
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