先発陣の誤算でレンジャーズ散る ダルビッシュ復帰1年目は悔しさと手応えと

丹羽政善

第2戦で先発も4本の本塁打を浴びたダルビッシュ 【Getty Images】

 一場春夢(※)。はかないものである。
 
 6カ月、162試合の戦いを経てア・リーグ勝率トップとなり、ホームフィールドアドバンテージを獲得したレンジャーズだったが、プレーオフではわずか3試合で姿を消した。

 試合後、「われわれは家に帰ることになった」とレンジャーズのジェフ・バニスター監督。失望感を隠さず続けた。

「感情を言葉で表すことはできない」

 相手は昨年も地区シリーズで対戦し、2連勝から3連敗を喫して屈したブルージェイズ。その昨季のプレーオフでは、第5戦に決勝本塁打を放ったホセ・バティスタがバットを放り投げると、レンジャーズの選手はそれをどこかで引きずった。今年5月に再戦したとき、あからさまにバティスタに死球をぶつけて“報復”。一塁に歩いた彼が二塁に滑り込んだ際、ありふれたスライディングなのに、ベースカバーに入ったルーグネッド・オドルが危険だったと過剰反応し、バティスタに右ストレート見舞うと、両軍入り乱れての大乱闘となった。

 そうした因縁もあってこのシリーズは注目されたが、因果応報とはよく言ったもの。併殺を狙ったオドルの一塁送球がワンバウンドととなり、ミッチ・モアランドがはじく間に、二塁走者が生還。延長10回、ワールドシリーズ制覇にもっとも近いとの評価もあったレンジャーズとダルビッシュ有の1年は、そうして幕を閉じたのである。

※一場春夢(いちじょうのしゅんむ):栄華がはかなく消えてしまうこと。

第3戦はレンジャーズらしい展開も…

「きついな」とエイドリアン・ベルトレ。「シーズンを通して、あれだけいい戦いをして来たのに、ここでこうなるとは」

 それでも第3戦は見応えがあった。序盤の差を一度はひっくり返すなど、ようやくレンジャーズらしい野球ができたのではないか。中盤までは点を取り合った後、終盤は両チームの踏ん張りで投手戦に。延長10回裏、ひき逃げなどの罪などで服役し、昨年10月に出所した異色の新人マット・ブッシュが、自身初の3イニング目に突入。球数も彼にとって過去最多の33球を更新しほぼ限界だったが、レンジャーズは先発したコルビー・ルイスの乱調もあり、すでに7人の投手を投入済み。ベンチに残っていたのはクローザーのサム・ダイソン、マーティン・ペレス、第4戦に先発予定のコール・ハメルズ、そして第5戦先発予定のダルビッシュの4人のみ。ブッシュの「大丈夫、まだ行ける」という言葉を信じ、監督が「せめてこの回までは」と送り出すと、彼はその期待に十分に応えたが、最後の最後で……。

 ただ、シリーズ全体を振り返れば、最後のオドルの送球ミスだけを責められない。

 そもそもの誤算は、ハメルズとダルビッシュだった。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント