先発陣の誤算でレンジャーズ散る ダルビッシュ復帰1年目は悔しさと手応えと

丹羽政善

先発2枚看板が期待に応えられず

第3戦、レンジャーズはエラーも絡みサヨナラ負け。3連敗で地区シリーズ敗退が決まった 【Getty Images】

 レンジャーズは昨年7月にハメルズをトレードで獲得した際、今年復活するダルビッシュと合わせて2枚看板をイメージした。ちょうど2001年、ダイヤモンドバックスがランディ・ジョンソンとカート・シリングという2人のエースを擁してワールドシリーズを制覇したときのように、ハメルズとダルビッシュの2人がプレーオフを勝ち進む原動力となることを期待したのだ。今年、計算通りにダルビッシュが復活し、チームがプレーオフに駒を進めると、いよいよそのシナリオが現実となった。

 シリーズ前、バニスター監督は、「これほどの2人を擁してプレーオフに臨むチャンスはなかなかないのでは?」と聞かれて、「いや、われわれは25人で戦っている。その質問に答えるのは難しい」とはぐらかしたが、その点での優位性は明らかだった。

 ところが、である。

 第1戦に先発したハメルズは、3回1/3、6安打7失点(自責点6)で降板。第2戦のダルビッシュは1イニング3本塁打を含む4被弾(ともにキャリア初)、5回5失点でマウンドを降りた。

 ハメルズに関しては、不安が現実になったとも言える。8月30日(現地時間)以降、6試合に先発して5失点以上が4回。四球から自滅するパターンが少なくなかった。

ダルビッシュは4被弾で天仰ぐ

 一方、ダルビッシュの4被弾は完全に想定外。確かに9月17日のアスレチックス戦で7安打7失点と崩れ、フォームの乱れに関しては「混乱」という言葉を口にしたが、9月24日の先発では7回を2安打、無失点に抑え、28日には「ずっと試行錯誤していましたけど、前回の登板である程度、出来上がってきたなという感じはします」と復調をアピール。その言葉通りレギュラーシーズン最後の登板となった30日の先発では、6回を投げて3安打1失点とほぼ完璧な内容だった。

 その日の試合後、こう言ったのが印象に残る。

「まったく心配がなく、良い成績が残せるんじゃないかなと思います」

 あの自信に満ちた口ぶり。納得の表情。プレーオフに間に合った――かと思いきや、4本塁打を浴びて天を仰いだ。

 それでもその第2戦はリリーフ陣が踏ん張り、それ以上の得点を与えていない。後は彼らの勝ちパターンである中盤以降に逆転する展開に持ち込むか、と見えたが、あの試合では得点圏で18打数2安打。13安打という相手の倍以上のヒットを放ちながら、拙攻を繰り返した。

 ようやく第3戦でレンジャーズらしい戦いを見せたのはすでに触れた通り。しかし、6回に一度は逆転しながら突き放せなかったのが響いた。

理想へは「ちょっとずつ近づいて来る」

 試合後、クラブハウスの外で取材に応じたダルビッシュ。彼個人の1年を振り返れば、トミー・ジョン手術から戻り、その後、一時的に離脱もしたが、難しいと言われる復帰1年目を無事に乗り切った。チームの敗戦にはもちろん、表情に悔しさがにじんだが、自身に関してはある程度の手応えを得た。自分が求める投手としての理想像に近づけたかとの問いに、こう答えている。

「だんだん道が狭くなってきてるかな。広い道がいくつも分岐してたのが、だんだん狭くなってくるわけですから、ちょっとずつ近づいて来るだろうとは思います」

 そこへの過程は「なかなか難しかった」そうだが、「こういう感じかなっていうのは、分かってきた部分もある」。

 ダルビッシュは気持ちを切り替え、来季を見据えた。この前向きさは、屈辱から立ち直ろうとするチームにとって、一筋の光明となるのかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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