ダルビッシュ、復帰初戦で上々アピール TJ手術経験者の復活の傾向は?

丹羽政善

手術からのリハビリを経て、1年9カ月ぶりにメジャーのマウンドに上がったダルビッシュ 【Getty Images】

 2マイル。今度は1マイル……。

 5月22日(現地時間)にテキサス州フリスコで行われたダルビッシュの5度目のリハビリ登板を取材したが、球場に表示される球速と、目の前に座っていたスカウトとおぼしき人のスピードガンを見比べると、球場の表示の方が常に1〜2マイル(約1.6キロ〜3.2キロ)遅かった。

 ダルビッシュが5月1日に同じ球場で1回目のリハビリ登板を行って97マイル(約156キロ)を記録したとき、「間違えないで欲しいのは、ここのスピードガンは2マイルぐらい遅いらしいので、そこは考慮して書いてください」と話したのは、あながち冗談ではなかった。

 その球速。ダルビッシュは28日のメジャー復帰登板後、「マイナーではスピードは出ていたんですけど、それはメジャーに来るまで、そのくらい出ているか信じないって思っていた」と冗談とも本気ともつかない言い方をしたが、初回から98マイル(約158キロ)を出すなど、リハビリと同程度。さすがにマイナーで最速97〜98マイルだった球が、メジャーリーグの球場で90マイル(約145キロ)に落ちることはなかったのである。

 それにしても復帰初戦から、ダルビッシュは圧巻だった。

 98マイルが最初に出たのは、グレゴリー・ポランコを1ボール2ストライクと追い込んでからの4球目。低めに外れていると判定されたが、打者がボールだと思って見逃したのではなく、手が出ないという見送り方だった。
 
 結局、5回を投げて3安打1失点だったが、その数字以上に相手を圧倒していたのではないか。

オールスター級投手の復帰戦は?

 以下にトミー・ジョン手術を受けたオールスタークラスの先発投手が、復帰登板でどんな結果を残したか、そしてその後をまとめたが、さすがメジャーリーグのエース格というべきか、多くが初登板でそれなりの結果を残している。

トミー・ジョン手術を受けたオールスター級先発投手 【スポーツナビ】

 しかし1回目はよくても、2戦目に炎上するケースがあるよう。

 例えば、サイ・ヤング賞争いの常連だったアダム・ウェインライト(カージナルス)は、2012年4月7日の復帰初戦で5回2/3を投げて4安打3失点とまずまずだったが、2戦目は3回を投げて7安打8失点だった。A.J.バーネット(当時マーリンズ)も、04年6月3日の復帰戦では、83球を投げて4回5安打2失点、無四球だったが、2戦目は4回1/3を投げて12安打8失点と打ち込まれた。

 ただ、その限りでは不安を残しても、ウェインライトは2年目に19勝(9敗)を挙げて完全復活。バーネットもその後、05年から引退する昨年まで平均で年30回以上先発している。1回の先発で何かを判断することはできないということか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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