初V目指す錦織、全米は全てが好条件 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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錦織、得意のハードコートで活躍を

銅メダルを獲得したリオ五輪の勢いそのままに、グランドスラム初制覇の期待もかかる錦織 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 29日(現地時間)に開幕する全米オープンでの、日本選手の展望をお話します。

 まず、リオデジャネイロ五輪銅メダル(!)の錦織圭選手(日清食品)から。昨年の全米では1回戦敗退でしたが、これがいい方向に働くかもしれません。昨年の大会は14年に準優勝した翌年でしたから、ランキングポイントのディフェンド(編注:前年に獲得したのと同じポイントをキープすること)を考えないわけにはいかなかったと思います。その点、今回はノンプレッシャーで戦えるはずです。

 今季は、ウィンブルドンこそ脇腹痛で悔しい結果に終わったとはいえ、成績が安定しています。ケガはしましたが、私の中では体が強くなっている印象があります。全米は彼の好きなハードコートですし、球足の速さも錦織選手に合っていて、彼自身も一番得意なサーフェスだと言っています。すべてが好条件の今大会、活躍が期待できます。  

 大きくランキングを上げた西岡良仁選手(ヨネックス)は、本戦からの出場になりそうです。彼はグランドスラムの予選を勝ち上がる力がありながら、ランキングではギリギリのところで本戦に入れない位置にいました。予選の決勝で敗れた今年の全仏では、ラッキールーザーの抽選でも運に恵まれず、本戦出場を逃しました。(師事する)高田充コーチは半分冗談で「お前はそういう運がないから自分で(出場を)勝ち取らなくてはダメ」と話したそうですが、実際、ウィンブルドンでは予選を突破しましたし、その後の活躍でランキングも急上昇しました。悔しさをいい方向に転換できたのは頼もしいですね。  

 これで、西岡選手は20歳にしてすべての四大大会に出場を果たしました。しかも4度も予選を勝ち上がっています。これは本当の実力がないとできないことです。私も現役時代には本戦で1回勝つより予選を3回勝つほうが難しいと感じていました。出るだけでなく、勢いに乗ればもっと上位も狙えます。ツアーでは小柄な選手ですが、日本人でもできるんだという気持ちの強さを前面に出してもらいたいですね。

女子はエース・土居に期待

今年のウィンブルドンでは四大大会で自身初のベスト16に進出した土居 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 日本女子のエースに成長したのが土居美咲選手(ミキハウス)です。グランドスラムでは惜しいところで勝ちを逃すことが多かったのですが、先のウィンブルドンでベスト16と躍進しました。  

 成績のみならず、内容が良かったことも強調したいと思います。もちろんフロックではないし、ただの勢いでもない、今持っている力を発揮しての活躍でした。やっと大きな舞台で実力通りの結果を出せたのは、彼女にとって大きかったことでしょう。だからこそ、全米でも期待ができます。ハードコートも彼女のプレースタイルに合っています。今のランキングは32位で、シードがつけば戦い方がぐんと楽になるので、それも期待したいですね。  

 日比野菜緒選手(ルルルン)はグランドスラムには4大会目の出場になります。これまでの出場ではタフドローが続きました。今年のウィンブルドンでは1回戦で実力者のアンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)と対戦、勝ちを目前にしながら敗れ、試合後には悔しい気持ちを話してくれました。ただ、グランドスラムにデビューしてしばらくは、大舞台でトップ選手と対戦するのがいい経験になるはずです。彼女もそれぞれの戦いが収穫となっているに違いありません。  

 全米では、これまでの悔しさを生かして、まずは1勝してほしいですね。彼女のよさは元気のいいところです。プラス思考だと思いますし、怖いもの知らずの若さもあります。これはベテランにとっては嫌なものですから、特権を思う存分、利用してほしいですね。1勝できれば、彼女の性格なら、勢いに乗って一気に大会2週目も見えてくるかもしれません。まずは今度こそタフドローではないことを祈ります。  

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