メドレーリレー連続メダル獲得ならず 安心感を与える「柱」の台頭を望む

田坂友暁

国の威信が懸かる競技最終日の最終種目

男子4×100メートルメドレーリレー決勝で日本の第2泳者・小関也朱篤が追い上げをみせたが5位に終わった 【Getty Images】

 五輪で最高に盛り上がるレースといっても過言ではない、競泳・男子4×100メートルメドレーリレー。競泳の競技最終日、最後のレースとなるだけに、各国がすべての力を集結し、総合力を競い合う。

 この種目で、日本は2004年のアテネ五輪から3大会連続でメダルを獲得。4大会連続となるメダル獲得に向けた予選は、3分32秒33の3位で通過。しかし、昨年のロシア・カザン世界選手権のメダルラインは3分30秒50。記録的にも厳しい戦いになることは予想できた。

 結果は3分31秒97の5位(編注:着順は6番目だったが、5着の中国が失格となり記録は5位)。目標としていた五輪4大会連続のメダル獲得はならなかった。

個人種目で結果が残せず迎えたレース

 その戦いに挑んだのは、第1泳者・背泳ぎの入江陵介(イトマン東進)に始まり、平泳ぎの小関也朱篤(ミキハウス)が第2泳者、バタフライを泳ぐ第3泳者は藤井拓郎(コナミスポーツ)、アンカーは自由形の中村克(イトマン東進)というメンバーである。

 背泳ぎの入江は今大会、かつての泳ぎを取り戻せずに苦悩していた。個人の100メートルでは53秒42の7位。さらに入江自身が「メーンレース」としていた200メートルでも、1分56秒36の平凡なタイムしか出すことができず8位に沈んだ。

 日本のお家芸と言われる平泳ぎで世界に挑んだ小関は、100メートルの予選で北島康介が持つ58秒90の日本記録にあと0秒01まで迫る58秒91を出す。だが、準決勝、決勝と記録を落としてしまい、決勝では59秒37の6位となった。不調なのかと思われたが、200メートルでは自己ベストにあと0秒03の2分07秒80の好記録でフィニッシュ。記録的に悪くはなかったが、「接戦になるのは分かっていたのですが……。何て言えばいいのか。悔しいです」と、5位という順位には全く納得するそぶりを見せなかった。

 昨年のロシア・カザン世界水泳選手権から、100メートルバタフライ一本にすべてを懸けてきた藤井は、大会7日目に行われた個人の予選に登場。だが、自己記録に遠く及ばない52秒36の20位で、準決勝に進めなかった。

 アンカーを務める自由形の中村は、3日目の男子4×100メートルリレーの第1泳者として47秒99の日本新記録を樹立。しかし、5日目の個人では48秒61の17位で予選敗退という結果だった。

 過去にメダルを獲得している3大会では、いずれも4人の中にメダリストが存在していた。しかし、今回はメダリストがいないばかりか、準決勝進出すらできていない種目が2つもあった。それぞれ4種目のトップが出そろう、まさに国の総合力を争うメドレーリレーで4大会連続となるメダルを獲得するためには、個々が最大限の力を発揮することが最低条件であった。

小関の奮起も及ばずメダルを逃す

 第1泳者の入江は、持ち味の後半の強さを見せたいところだったが、思うように記録が伸びず、53秒46の5位で小関に引き継いだ。

 タッチを受けた小関は、隣のコースにいた100メートル平泳ぎの世界記録保持者であるアダム・ピーティー(イギリス)の驚異的な前半に食らいつく泳ぎを見せる。後半、疲れから少し泳ぎが詰まってしまったが、それでも予選から0秒37速い、58秒65と力を出し切った。だが、オーストラリアとロシアもそれぞれ予選よりも記録を上げており、一つ順位を落とした6位でバタフライの藤井に引き継ぐ。

 藤井は後半に強い選手だが、前半から攻めるレースを展開。最初の50メートルを23秒87という、藤井にしては速いラップタイムを刻む。得意な後半も粘り強く泳ぎ切り、51秒56で順位を2つ上げ、4位でアンカーの中村にすべてを託した。

 3位を行くオーストラリアとの差は、0秒46。後ろの5位ロシアとの差も0秒41と、まさに接戦。日本記録を持つ中村も前半の50メートルを22秒70のハイペースでターン。ラスト50メートルの勝負になったが、100メートル自由形金メダルのカイル・チャルマーズ(オーストラリア)を破るのは厳しかった。中村は後半失速してしまい、48秒30。日本のトータルタイム3分31秒97は、予選より記録を上げたものの、それ以上にタイムを上げてきたオーストラリアとロシアに敗れた。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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