メドレーリレー連続メダル獲得ならず 安心感を与える「柱」の台頭を望む
チームに安心感を与える「柱」の不在
「世界のレベルが上がっていることが身にしみて分かったので、4年後に向けて何ができるかを考えていきたい」(小関)
「それぞれが0秒5ずつ上げれば勝負できると話して臨んだのですが、悔しいです」(藤井)
「メダルを狙っていたので、本当に悔しい。また力をつけるために一から頑張ります」(中村)
「戦える」と思っていた。日本の「伝統」を守りたかった。萩野公介(東洋大)と金藤理絵(Jaked)の金メダルに力をもらい、52年ぶりとなるメダルを獲得した男子4×200メートルリレーに続きたかった。
強い思いを持って臨んだ4人だったが、レース後は全員が肩を落とし、悔しさをにじませた。結果を見れば、4人の中で力を出し切れたのは、平泳ぎの小関くらいで、入江、藤井、中村は、記録的には持っている実力を出し切ったとは言い難い。その原因の一つに、リレーメンバーに「柱」がいなかったことが挙げられる。
アテネ五輪では、バタフライの山本貴司という大きな兄貴的存在がいて、メンバーに安心感を与えていた。北京、ロンドンでは平泳ぎの北島を中心にチームがまとまった。「彼に任せておけば大丈夫」「あの人のために頑張ろう」。チームがまとまるには、そういう絶対的な存在が必要だ。男子4×200メートルリレーでは、萩野というエースがいて、松田丈志(セガサミー)という兄貴的存在を中心にまとまっていた。
チームとしてのまとまりはあったが、予選で感じた逆境をはねのけるような爆発力を発揮するまでに至らなかった理由の一つに、そういう「柱」になり得る選手が存在しなかったことがあるのではないだろうか。
チーム力の土台となる個人の力を
その一方で、メダルが期待された選手が力を出し切れないレースが多く見られたのも事実だ。昨年の世界選手権200メートル平泳ぎの金メダリスト・渡部香生子(JSS立石)、瀬戸大也(JSS毛呂山)の200メートルバタフライ、背泳ぎの入江、小関の平泳ぎ。今大会で自己記録を大幅に更新してメダルを獲得したのは、200メートルバタフライの坂井聖人(早稲田大)のみ。ほかのメダリストたちは、もともとメダルが取れる実力を持ち、その力を大舞台で存分に発揮した。
また、総合力の戦いとなるメドレーリレーで勝ち抜くための個人100メートルでメダルが狙える種目が少ないことも、これから日本が取り組まなければならない課題である。競泳日本代表チームの大きな力になっている「チーム力」は、個々が世界と戦える実力を持っていることが大前提だ。今回は残念ながら、個々の力が不足していたとも言えるだろう。
今回の代表メンバーは、東京五輪を目指せる選手がほとんどだ。五輪という大舞台を経験したことをどう生かしていくのか。これからの4年間で個々のレベルアップを図り、東京五輪では、センターポールに日の丸を掲げることはもちろん、リレー種目でチーム力を発揮できるような確実な実力をつけていくことを期待したい。
リオデジャネイロ五輪は決してゴールではない。競泳日本代表チームにとっては、新たなスタートなのである。