禁固刑を宣告されたメッシに待つ未来 求められるプレッシャーに打ち勝つ覚悟

駆けめぐった衝撃のニュース

バルセロナに数々の栄光をもたらしてきたメッシ。そんな彼に関する衝撃のニュースが飛び込んできた 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 今週、いくつかのニュースが世界中のバルセロナファンに衝撃をもたらした。中でも最も大きなインパクトを与えたのは、2007年から09年にかけて肖像権収入の一部を脱税した疑いから、リオネル・メッシが21カ月の禁固刑を宣告されたことだ。

 スペインでは刑期が24カ月未満で過去の犯罪歴もない場合、実際に収監されることは滅多にない。だがメッシは父ホルヘと合わせて約400万ユーロ(日本円で約4億6500万)の罰金を科せられただけでなく、今後何らかの法律違反を犯した場合は再犯扱いになるため、即実刑が処される可能性を抱えることになる。

 もう1つのニュースは、長らくメッシの獲得を望んできたチェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチがこの混乱に乗じてメッシ一家に接近し、魅力的なオファーを提示して新たなクラブ、新たなリーグでキャリアを築くのはどうかと提案していることだ。イギリスのタブロイド紙が報じた情報とはいえ、現時点ではまだ当事者からこの報道を否定するコメントは発せられていない。

 この報道に対し、生じた疑問が2つある。1つはこの情報にどれだけの信ぴょう性があるのか。もう1つは、メッシはバルセロナを去るべきかどうかだ。

スペイン国内で見られる2種類の反応

メッシを支持する声もある一方で、「脱税者メッシ」に対する批判の声も聞かれる 【Getty Images】

 スペインではメッシに有罪判決が下された直後より、フットボール界を含めて、社会的に二分されているこの国特有の2種類の反応が見られている。

 カタルーニャ全土、そしてソーシャルメディアなどを通して世界中のファンから聞こえてくるのは、メッシを支持する声だ。一方でスペインのその他の地域、とりわけマドリーでは「脱税者メッシ」に対する批判が繰り広げられている。そのため今後メッシはアウェー遠征のたびに、自身を犯罪者とののしる人々の非難に苦しむことになりそうだ。

 こうした金銭絡みの問題について、メッシに直接の責任があるかどうかを検証するのは難しい。少なくとも私は、彼が肖像権を含めた契約関連の手続きには直接関わっておらず、信頼する家族の指示に従ってサインをしただけだという証言は信じるに値するものだと考えている。

 しかし、6月24日に29歳の誕生日を迎えた彼はもう子供ではない。下あごに蓄えたひげも、2児の父として妻と築いた家庭も、彼が一社会人として法的責任を負うべき立場にあることを示している。そしてその責任は、家族を養うことにとどまらない。所属するリーグに定められたルールを守ってプレーするように、住んでいる町や国の法律を正しく理解し、義務を果たすということも含まれている。つまり彼が犯した過ちは、その国の交通ルールを確認せぬまま車を運転し、間違った車道を走ってしまったようなものである。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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