禁固刑を宣告されたメッシに待つ未来 求められるプレッシャーに打ち勝つ覚悟

メッシに残されている難しい道

移籍か、残留か。今後数週間のうちにメッシはその答えを出すことになる 【Getty Images】

 1つはっきりさせておきたいのは、こうした境遇に置かれているのはメッシだけではないということだ。トップレベルのアスリートが経理に精通し、自ら契約関連の処理を行うことなどまれであり、金を払って代理人や専門の会計士に委託するのが普通である。だが、現状では自らのイメージを守るため、そして余計な支払いを避けるためにも、彼は自身に関わる情報をくまなく把握する必要に迫られている。

 今後メッシは、過去に「合法であれ違法であれ、手段を選ばずメッシを止めろ」と煽ったことすらあるマドリーメディアの批判やプレッシャーに耐え続けることができるだろうか。

 果たしてメッシはあらゆるプレッシャーを耐えしのぐ覚悟を決めているのか。それとも新天地で新たなキャリアをスタートする時が来たと考えているのだろうか。すでに彼はバルセロナというクラブや町だけでなく、そのプレースタイルともあまりにも深く結びついてしまっているだけに、どちらを選ぶにせよ難しい道になることだろう。

 メッシはボールを扱うアーティストであり、フットボールをプレーすること以外に何を理解する必要もない。そのような考えも間違っていないかもしれない。だが現在、彼に生じている問題は、たとえ気が進まないことであっても、成人となった以上は人任せにしてはいけないものがあるという教訓となったのではないだろうか。

 人生で経験するのは楽しいことばかりではない。たとえ、より良いプレーができる保証がなくとも、不必要な苦痛を避け、今より落ち着いて生活できる環境を得るために、他クラブのオファーを検討しなければならない時もある。メッシほど優れた選手であっても、楽しくフットボールをプレーしているだけでは許されないのである。

 バルセロナを去るべきか、残るべきか。今後数週間のうちに、メッシは自身の未来を決断することになる。

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント