MLBに君臨する異次元の左腕カーショー すでに100奪三振、与四球は5個

山脇明子

5月30日時点で7勝1敗、防御率1.56の好成績をマークするカーショー 【Getty Images】

 ドジャースのトレーニングキャンプ中のことだ。数人が投げることのできるブルペンが、突然静まり返った。コーチ陣をはじめ選手や球団関係者、報道陣ら、その場にいた全員の目が1人の左腕に向いた。

 クレイトン・カーショー。右足を大きく上げ、地面に着くかどうかのところでまた小さく上げて、大きく踏み込みボールを投げる。その姿には人目をひきつける強いオーラが出ていた。

黒田からも多くを学んだ若手時代

 2008年にメジャーデビューした時はまだ20歳で、憧れの舞台に立てることを楽しんでいるようなニコニコしている青年だった。しかし、マイナー時代からカーショーと親しく、女房役も務めているA.J.エリスによると、「彼はルーキーの時から向上心が強かった」と言う。当時のキャッチボールの相手だった黒田博樹にも多くを質問した。そんなカーショーについて黒田は「彼の頭はスポンジのよう。人から言われたことを素直に聞き入れ、すぐに取り入れることができる。あれは才能としか言えない」と話していた。

 それらの才能を開花させるのに時間はかからなかった。カーショーは2年目30試合に先発登板して防御率2.79を記録すると、4年目の11年には21勝(5敗)、防御率(2.28)、奪三振数(248)ともにナ・リーグトップでサイ・ヤング賞を受賞。13年、14年にもサイ・ヤング賞を獲得し、14年には最優秀選手(MVP)との同時受賞を成し遂げた。昨季はメジャーで13年ぶりの300奪三振も記録している。

 そして、今季も変わらずメジャー界のエースとして君臨する。5月30日(現地時間)時点で7勝1敗、防御率1.56。86.2イニングを投げて奪三振105に対し、与四球はわずか5つだ。100奪三振の時点で5四球というのは、1900年以降の近代史で過去に例がない快挙である。

 4月21日から5月17日まで6試合連続10奪三振以上を記録、完封勝利もすでに3度達成。5月1日のパドレス戦では自らのバットで挙げた唯一の1点を守り切って完封勝ちし、ドジャースの連敗を6で止めた。同23日のレッズ戦でも6回に貰ったわずか1点の援護を、2安打完封で勝ちにつなげた。

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著者プロフィール

ロサンゼルス在住。同志社女子大学在学中、同志社大学野球部マネージャー、関西学生野球連盟委員を務める。卒業後フリーアナウンサーとしてABCラジオの「甲子園ハイライト」キャスター、テレビ大阪でサッカー天皇杯のレポーター、奈良ケーブルテレビでバスケットの中体連と高体連の実況などを勤め、1995年に渡米。現在は通信社の通信員としてMLB、NBAを中心に取材をしている。ロサンゼルスで日本語講師、マナー講師、アナウンサー養成講師も務めている。

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