手倉森「パイが広がってきている」 U−23日本代表 ガーナ戦後会見
試合後「きっちり勝てて良かった」とコメントした手倉森監督(左) 【Getty Images】
日本は前半11分に相手のミスを突き矢島慎也が先制ゴールを挙げると、その4分後にも矢島が再び追加点を奪い、試合の主導権を握る。前半30分には、またも相手のミスから最後は富樫敬真が鮮やかなループシュートを決めて前半から3点のリードに成功。その後も勢いに乗る日本はリズムの良いパス回しと、効果的なサイド攻撃を繰り返し、ガーナを自陣に押し込むことに成功するが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。逆にガーナが時折見せる鋭いカウンターに苦しめられるシーンもあったが、相手に得点は許さないまま試合終了のホイッスルを迎えた。
試合後、手倉森誠監督は「きっちり勝てて良かった」と安堵(あんど)の表情。「最初からエンジンいっぱいで前半のうちに3点仕留めた、というのが彼らの覚悟だった」と、被災地・熊本への思いをピッチで表現し、しっかりと結果を残した選手たちを評価した。
また、この試合はリオデジャネイロ五輪に向けたチーム作りにおいて、選手たちにとっては貴重なアピールの場となったが、「パイが広がってきているところに可能性をものすごく感じている。良い状態だなと思っています。本当に厳しい競争を勝ち抜いた選手たちは、間違いなくメダルの可能性を持った選手たちになるだろう」と、今後の期待を口にした。
困難を乗り越えてきたわれわれが希望になる
最初からエンジンいっぱいで前半のうちに3点仕留めた、というのが彼らの覚悟だったと思います。スピードとパワーを身に付けなければいけないというゲームで、ちょっと後半の終盤にスピードとパワーが落ちましたけれど、ある程度はそれを身に付けるべくパワーを注いでくれて良かったと思います。
また1万人を超えるお客さんが熊本にエネルギーを届けてくれました。同じ思いを持って、スタンドとチームが一緒になれた雰囲気の中で戦えたからこそ、3−0の無失点で試合を終えることができたのだと思います。集まってくれた皆さんに感謝したいと思いますし、ぜひこれからも一緒に戦ってほしいと思います。
――監督は東日本大震災においてベガルタ仙台を率いて被災者の希望になるということを目指し、今回図らずも同じような状況になってしまった。希望になるという意味で、選手の変化をどう感じたか?
この世代の選手はうまくしてプロになれたわけだけれど、いろいろな力があってプロになれたわけです。そして代表選手になったことによって、育まなければいけない人間力があります。
社会で起きたことに対して、思いを寄せられるかどうかが大事になる。仙台のときもそういったところを働き掛けたことで、思っていた以上の力を発揮できたということがありました。人間の力をまざまざと見せつけられました。このU−23の選手たちにも同じような思いを注いで、その思いをくんで戦えるようになったときには、より成長の速度が増すだろうなと思っています。
このキャンプとチャリティーマッチが持つ2つの意味合いを彼らが理解して、サッカー界と被災地の希望になるのだという思いが表現できたとき、サッカー選手として以上に人として成長できるのかなと思っています。そして、運も持てるようになってきたのかなと思います。期待の薄かったこの世代が本当にいろいろなことを為し遂げられるようになってきているのは、彼らがそういった思いの部分を感じ取れるようになってきているからです。予選のときは反骨心から、そして今回は希望になるんだという思いがある。そういう思いから、彼らは成長してくれているなと思います。
良いトレーニングになった
昨日ミーティングやトレーニングで、「足元、足元のプレーが多く、ポゼッションし過ぎている」という話をしました。それはJリーグの中で(通用する)シチュエーションだという話をしました。そのクオリティーは高まっているとは思いますが、インターナショナルな戦いについて(イメージを)描かないといけない。0−0であれば、ボールを奪ったときにゴールへ突き進むこと(が重要)なんだ、と。そういうインターナショナルなゲーム(のイメージ)を描いてくれという映像も見せました。彼らがその重要性になびいてくれて、その通りに奪った瞬間からゴールへ向かっていってくれたなと思います。
世界の強豪国に比べても、日本は組織という強みがある。でもボールを握り続けることはまずできない。やっぱり良い守備からの良い仕掛けを磨いた先に、世界で勝てる確率は高まっていくのだと思っています。そういう話をして、選手たちがそれを理解してやってくれたのかなと思います。それで仕留められるようになれれば、育成年代から取り組んできたポゼッションというのがうまく機能するようになる。まず勝つためにゴールへ向かわなければいけない、という姿勢を彼らが高めているところかもしれないし、それは高め続けなければいけないものだと思います。
――今日は右サイドを使った攻撃が理想的だったのでは?
右サイドというか、ガーナがボールサイドにブロックをスライドしてくる(ディフェンスのやり方だった)ので、(ボールと反対側の)サイドを起点にということは考えていました。日本の悪いクセは、いつも切り返してやり直すところ。相手のゴール前の準備が不徹底ならば、ラストパス、アーリークロスを狙っていけという中でやっていました。
(2点目のシーンでは)伊東幸敏が良いタイミングで出ていって、良いラストパスを供給してくれたと思います。ましてやあれはリスタートでしたから。試合が切れた後だっただけに、相手にとっては大きなダメージがあったと思います。
――アフリカ勢との初対戦だったが、収穫は?
(ガーナは日本まで)大移動してきてくれていたので、コンディションに関しては間違いなくわれわれの方が上だったと思います。けれど、身体能力という部分では彼らは間違いなく持っているものがある。ですから、最初に闘争心を持って当たりにいけという話を(試合前に)しました。ひとついって取れなくても2ついけ、と。ひとつ行ってかわされても二度、三度と追い続けろ、と。もう少しコンディションの良いアフリカのチームだったらもっといなされるかもしれないですけれど、今日のようなレベルの中で選手たちはコンタクトをいとわずにやり切ったところは、良いトレーニングになったなと思います。
浮いたボールでセカンドボールの争いでも、体をしっかりぶつけにいったところなどは少したくましくなったな、と思います。これをトゥーロン国際大会でも継続して、本大会まで良い準備を続けていかなければいけないと思っています。