現代野球の指標では傑出した数字を記録。オリックス・岸田護新監督の現役時代を振り返る
オリックス・バファローズ 岸田護新監督 【ⓒパーソル パ・リーグTV】
オリックス一筋で14年間プレーし、433試合に登板してチームを支えた
先発として2桁勝利を記録し、抑えとしても年間33セーブと躍動を見せた
岸田護氏 年度別投手成績 【ⓒPLM】
2008年も防御率2.94と安定した投球内容を見せたが、故障の影響で12試合の登板にとどまった。続く2009年もケガで戦列を離れた時期はあったものの、19試合の登板で2度の完封を記録し、うち1試合は無四球完封とハイレベルな投球を披露。キャリア初の2桁勝利となる10勝を挙げ、先発として大いに存在感を示した。
続く2010年も先発陣の中心としての活躍が期待されたが、やや安定感を欠いてリリーフに再転向。チーム事情もあってシーズン途中からはクローザーを務め、6勝5敗11ホールド12セーブという数字を記録。さまざまな役割に適応できるマルチな才能を発揮し、投手としての能力の高さを証明してみせた。
2011年も前年に引き続いて抑えを務め、自己最多の68試合に登板。キャリア最多の33セーブを記録し、守護神としてフル回転の活躍を見せた。翌2012年も18セーブを挙げたものの、シーズン途中からは後に名球界入りする平野佳寿投手と入れ替わりで中継ぎに回っている。
2013年は37試合の登板にとどまったが、防御率2.12に加えて、奪三振率10.22、与四球率1.35、K/BB7.57という圧倒的な成績を残した。その後もブルペンの一角として登板を重ね、2014年は55試合、2015年は50試合に登板。2010年以降の6年間で5度にわたってシーズン50登板以上に登板し、チームのブルペンを支える存在として幅広い起用に応えた。
プロ入りから10年間にわたって主力投手として活躍を続けてきたが、2016年は16試合の登板で防御率7.90に終わり、その後は一軍での登板機会が減少。2018年は17試合で防御率2.35と復調の兆しを見せたものの、翌2019年限りで現役引退を決断している。
奪三振が多く、四球が少ないという理想的な傾向を備えた投手
岸田護氏 年度別投手指標 【ⓒPLM】
また、岸田氏は短いイニングに専念したことで制球力が改善したというタイプではなく、持ち場を問わずに優れた制球力を発揮していた。その証左として、主に先発を務めた2008年の与四球率が0.94、自己最多の139.1イニングを投じた2009年の与四球率が1.29と、いずれも非常に優れた数字を記録している。
さらに、キャリア通算の奪三振率が8.35と、こちらも優秀な数字を記録している。プロ2年目の2007年から2015年までの9年間において、8点台以上の奪三振率を記録したシーズンが7度存在。2011年、2013年、2015年の3シーズンにおいては奪三振数が投球回を上回っており、三振を奪う能力も高かったことが示されている。
その結果として、奪三振を与四球で割って求める、投手としての能力や制球力を示す「K/BB」という指標が非常に優れている点も特徴だ。K/BBは一般的に3.50を上回れば優秀とされているが、岸田氏が残したキャリア平均のK/BBは4.68と、基準となる数字を大きく上回る値に到達している。
プロ1年目の2006年から2015年までの10シーズンで、K/BBが3.50を下回ったのは1度だけ。唯一の例外である2014年のK/BBも3.35と、3.50をわずかに下回った数字にとどまっている。とりわけ、2013年は奪三振率10.22に対して与四球率が1.35と素晴らしい成績を残しており、同年のK/BBは7.57という驚異的な成績となっている。
また、先発として活躍した2009年のK/BBは6.20と、2024年の規定投球回到達者の中で最も高いK/BBを記録した加藤貴之投手の6.06を上回る数字を記録。さらに、2008年は故障で12試合の登板にとどまったものの、K/BBは8.29という驚くべき水準に到達していた。先発で長いイニングを投じた年であっても、ハイレベルな投球内容を維持した点は特筆ものだ。
通算防御率2点台という数字は、投手としての実力の表れでもあった
岸田氏の被BABIPはキャリア通算で.306と、基準値にかなり近い数字となっていた。この結果を鑑みるに、岸田氏が残した成績は運によって大きな影響を受けたものではなく、概ね投手としての実力を表していると考えられる。それでいて、キャリア通算の防御率が2点台と優秀な水準に到達している点に、岸田投手の能力の高さが示されていると言えよう。
新指揮官が振るうタクトに要注目
さらに、現役時代に先発・中継ぎ・抑えの全てを務めたという岸田氏の得難い経験は、指揮官として選手たちと接する際にも活かされ得る要素となっている。良き兄貴分として後輩たちに慕われ、引退後は投手コーチとして後進の指導にあたってきたこともあり、若き指揮官の就任によってチームに化学変化が生じる可能性もあることだろう。
2019年の引退セレモニーにおいて、岸田氏は今後のオリックスが「絶対に強くなります」と断言した。その言葉通りにチームは大きく躍進を遂げ、リーグ3連覇と悲願の日本一を達成している。先見の明を持つ若き指導者は、監督としてチームをさらなる高みに導くことができるか。来季から発揮されるその手腕には、ファンならずとも要注目だ。
文・望月遼太
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