錦織&ラオニッチが果たす大きな役割 “ビッグ4”のほころびを見たマスターズ
錦織、ジョコビッチに完敗
マスターズ初優勝を狙った錦織(左)だが、ジョコビッチを追い詰められず準優勝に終わった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
ジョコビッチが錦織に2−0で完勝したマイアミ・オープン決勝終了からわずか30分後。会見室に現れた錦織は、両者の“経験の差”について問われると「今日は、経験の差が出るところまで、彼を追い詰めることすらできなかった」と言って、自嘲気味な笑みを浮かべた。
今日の対戦から得た攻略のヒントや手応えについて聞かれると、彼は、驚くまでに素直に言う。
「どれだけタフにプレーできるかと、長いラリーになる中で、少ないチャンスをどれだけ見つけて打っていき、しかもそれが入らないといけないので……。本当に崩すのは難しいと思います」
立ち上がりは素晴らしかったが……
マイアミ・オープンの決勝でジョコビッチに挑む、錦織の立ち上がりは素晴らしかった。相手のサービスで始まったゲームの2ポイント目で、長い打ち合いでも攻め急ぐことなく、フラットとスピン、深さと角度を用いて主導権をジリジリと引き寄せ、最後はフォアの強打をストレートにたたき込む。腰を据え、五分の打ち合いを挑む錦織の姿勢に、あのジョコビッチと言えど怯んだろうか。ジョコビッチが立てつづけにミスし、錦織はいきなりのブレーク奪取という、これ以上望めぬスタートを切った。
しかし続くゲームで、ジョコビッチは即座にブレークバック。「精神的に相手を楽にしないためにも、すぐに追いつく必要があると思った」。以降はジョコビッチの老獪(ろうかい)さと王者の威厳が、錦織を徐々に圧していく。プレーが後手に回れば精神の消耗も早く、心の疲弊は肉体への負荷にもなる。試合終盤では足に痛みも覚え3−6、3−6で敗れた。
ジョコビッチに挑んだもう一人の男
ラオニッチ(写真)も錦織と同じく、決勝でジョコビッチに挑んだ 【Getty Images】
25歳のラオニッチは、錦織と並び、テニス界の次期トップ候補と目されてきた選手である。昨年はケガもあり苦しんだが、今季は元世界1位のカルロス・モヤをコーチにつけ、開幕早々に優勝するなどキャリア最高のシーズンを送っている。インディアンウェルズでも自らのレベルアップを証明するかのように、第6シードのトマーシュ・ベルディハ(チェコ)や13シードのガエル・モンフィス(フランス)らを破って決勝へ。力強い足取りで、ジョコビッチへの挑戦権をつかみ取った。
しかしそのラオニッチが、最初のゲームでジョコビッチにブレークを許し、最終的にはわずか2ゲームしか奪えずに敗れる。
「ノバクは最もリターンが良い選手だ。どんなに速い球でも勢いを殺し、主導権を握ってしまう」
「ノバクに勝つには、決めるべき場面でより良いプレーをしなくてはいけない」
ラオニッチもまた最大の武器を無効化され、勝機を見い出すことができなかった。