「美しく勝利すべき」だが、まずは勝利 スペイン暮らし、日本人指導者の独り言(2)
監督として憧れるのはラージョのパコ・ヘメス
監督として憧れているのは、ラージョ・バジェカーノのパコ・ヘメス(左)だ 【写真:ロイター/アフロ】
私の率いるサッカースクールのチームも、スペインサッカー連盟所属チームのセレクションに落とされた子たちや、単に放課後に運動をしたいという子たちで構成されている。だから、テクニシャンぞろいでもないのに良いサッカーをして、しかも勝つというパコ・ヘメスにより憧れ、親近感を抱くのだ。
そのパコ・ヘメスの最近の言葉にこんなのがある。
「私は結果主義者ではない。もしそうなら、敗れた時にファンを喜ばせるものがなくなってしまうじゃないか」
「監督のクビは結果次第だ。だが勝つためにこそ、良いサッカーをしなければならない。これがなかなか理解してもらえないんだ」
彼はプロだからファンを喜ばせなくてはならないが、私はプロじゃないから子供だけを喜ばせばいい。その違いはあるにしても、私はこれらの言葉を全面的に支持する。パコ・ヘメスは二兎を追っている。良いサッカーと結果と。そして、良いサッカーをすれば結果が出る、否、出るべきだという信念を持っている。
“結果主義者”ではない、物には順序がある
のどかなある土曜日、4、5歳の子供たちによる大会が開かれていた。ボールの方が大きいのでは、というような小さい子もいて、笑みが漏れた。この年代では勝たなくていい、楽しければいい 【木村浩嗣】
美しさと勝敗には、次の4つの組み合わせがある。
(1)美しく勝利する
(2)美しく負ける
(3)醜く勝利する
(4)醜く負ける
これらのうち、いいとこ取りの(1)が最高で、悪いとこ取りの(4)が最低なのは、論を待たない。問題は(2)と(3)の優先順位だ。パコ・ヘメスの場合は(2)(3)の順だろう(あるいは彼なら“良いサッカーをしなければ勝てないのだから、(3)の選択肢は存在しない”と言うかもしれないが)。私の場合は(3)(2)の順である。つまり、美醜よりも勝利を優先する。
これをもってして“結果主義者”と呼ばれるのは心外だ。パコ・ヘメスと同じく(1)を常に目指しているのだから。だが、物には順序がある、と思うのだ。まず、内容をある程度犠牲にしても勝てるチームを作る。それを達成した後、ステップアップとして、内容を伴った美しく勝利するチームを作る。