ポリバレントなウェルメスケルケン際 ピッチ内外で見せるドルトレヒトへの貢献
「新鮮だった」オランダのサッカー
今季前半戦で、ドルトレヒトの右SBとしてレギュラーを努めたファン・ウェルメスケルケン際 【中田徹】
際に「この記事、もう読んだの?」と聞いてみた。
「はい、読みました。クラブに置いてあった『フットボール・インターナショナル』を僕が家に持ち帰ってしまったので、チームメートは読んでいないはずです。これを読んでくれたサポーターに、僕のことをこれまで以上にもっと知ってもらういい機会になりました。でも、そこに一喜一憂していたらいけないので、もう次という感じですね」
記事には「彼はかつて一度、夏休みにオランダに戻って2週間過ごしたことがある。『僕は12歳でした。今まで会ったことのない親戚に会えたことも素晴らしかったですが、何よりサッカーが良かったです。僕はもう日本へ戻りたくなかった。祖父と祖母が、僕のためにNECとドルトレヒトのU−12の練習に参加できるようにしてくれたんです』」とあった。「僕はもう日本へ戻りたくなかった」と際に思わせたものは何だったのだろう。
「オランダのサッカーが新鮮だったんです。僕が育った八ヶ岳グランデフットボールクラブ(現ヴァンフォーレ八ヶ岳)の根本はブラジルサッカーでドリブルや足元の技術ばかり取り組んでいました。ボールが来たらトラップして、それから何かしましょうというスタイルだったんです。でも、オランダに来たらドリブルしない、パスをする、ダイレクトを使う。(サッカーの種類が)ちがうなぁ。俺は何もできていないと思いました。あまりにサッカーの伸びしろがありすぎて『面白いからオランダにもっといて、もっとやりたい』と思いました」
際が英語で受けたインタビューは、オランダ語の記事として「僕はもう日本へ戻りたくなかった」という短い一文になったが、あらためて日本語で言い直すと際のかなりの思いが詰まっていた。際は「言語の壁がまざまざと現れていますね」と言って笑った。
インターンシップでフロント業務を体験
「インターンシップ・プロジェクトの分析レポートをやっと昨日(2月4日)提出できました。15ページ書くのは長かった。僕はインターンシップを自分がプレーするドルトレヒトで行い、チーム状況の分析をしたり資料を集めたりし、それをオランダ語から英語へ翻訳しました。このクラブはスポンサーを増やさないといけないので、そのための準備もしていました。サポーターデーにも携わりましたね」
ドルトレヒトはオランダのプロクラブの中でも小さなクラブだから、経営を安定させるためには大きなスポンサーが欲しい。しかし、メインスポンサーのリーワルにしろ、サブメインスポンサーのWSBソルーションにしろ、地元の企業。国際的な企業はユニホーム・スポンサーのマクロン(本社イタリア)ぐらいである。そこでインターンシップの一環として、際は日本企業獲得に試みることをクラブから託された。とはいえ、際は論文を書かないといけないし、何よりメーンの仕事はプロサッカー選手である。だから、インターンシップの期間内には日本企業向けのプレゼンテーション資料を作る余裕がなかった。
「インターンシップでドルトレヒトのダイレクターが聞いてきたのは『日本の企業をスポンサーにできないか』ということ。オランダ企業のスポンサー獲得なら、オランダ人が営業した方がいい。でもドルトレヒトのようなクラブはインターナショナルな経験がないから、クラブにとって日本企業は未知数なんです。もうインターンシップは終わりましたが、論文も終わったのでこれからパワーポイントなどでプレゼン資料を作り、僕が日本企業とコンタクトを取ることになっています」