有馬記念とJCの共存、その意義 国際レースとしての将来を模索する

有馬記念の将来は

有馬記念は来年から1着賞金が3億円に増額、そのうえ外国馬まで参戦するようになったら……?(写真は14年有馬記念) 【写真:中原義史】

 前述の通り、来年度から有馬記念の1着賞金が3億円に増額され、日本で最も賞金が高いレースとして、ジャパンCと並立することになりました。

 また、今のところ一頭も現れていませんが、2000年から外国馬の出走も可能になり、07年からは国際競走になったため、外国馬の出走枠が6頭になっています。

 創設当初、「ファン投票で出走馬を選定する」、そして「ファンにより身近に感じてもらう」といったような狙いがあった有馬記念ですが、もしも馴染みの薄い外国馬が6頭出走した場合、日本馬は10頭。これでは創設当初の理念から、かけ離れた性格を帯びてしまいませんか?

 無論、有馬記念をそういった国際色豊かなレースにするのだ、という狙いがあるのなら仕方ありませんが。

 ただ、そうなると今度は、「外国馬を呼んで国際レースを」というジャパンCの領域に踏み込むことになります。

 有馬記念の開催時期から考えると、外国馬の参戦があるとすればオセアニアの馬が多くなるでしょうから、“世界一決定戦”と呼ぶには大袈裟になるかもしれませんが、それでも日本で最高賞金の国際レースに違いはありません。

 有馬記念がそういう性質を強めれば強めるほどジャパンCの意義は曖昧になり、もしもそれぞれの出走メンバーの質に影響するようになると、お互いの良いところを潰し合うことにつながりかねません。

 ジャパンCの存在意義を考え、改革案を云々するのであれば、有馬記念との関連性を無視することはできない、と思っています。

幻想に惑わされてはいないか

有力馬の1頭ラブリーデイ、年度代表馬争いでも今年の有馬記念は注目の一戦となりそうだ 【写真:中原義史】

 かたや今年で60回目を迎えた暮れの名物レース。一方は、日本初の国際GIレースとして、ハイレベルなエンターテインメントを発信し続けることで、しっかりと伝統を刻んで35回を数えました。それぞれがそれぞれの役割を担うことで日本競馬の発展につながったわけで、ジャパンCの結果、あるいは香港での結果などで、「とっくに日本馬は世界レベルに達しており、“世界においつけ追い越せ”の時代ではないから」という理由で「ジャパンCは必要なし」と考えるのだとすれば、それは安直で、少々浅慮な印象が拭えません。

 そもそもが、本当に、追い越すどころか追いついている、のでしょうか?

 第1回ジャパンC当時の伝説に、馬上でタバコを吸う日本の関係者を見て、欧米人が驚いた、というのがあります。日本が後れていたかどうかはさておき、それほど意識レベルに“違い”があったということ。

 勿論、現在からすれば隔世の感がありますが、僅か35年で、そういった“違い”を理解し、そのうえで追いつき、追い越せているのでしょうか。日本に来て活躍する外国の騎手をちょっと見るだけでも、首を捻らざる得ない感じもありますが……。

 富国強兵を謳い、西欧列強にすっかり追いついたから、と独自に走り出した時代の行く末を連想しては無理があるかもしれません。ですがやっぱり足元をしっかりと見て、外国馬、ひいては“外国の競馬”との交流の窓口として、その礎となったジャパンCを伝統的なレースとして成長させていくべきではないでしょうか。

 やるべきことは、いかに魅力あるコンテンツであるかを提示し、発信していけるか。具体例として、ビッグイベントとして有馬記念との共存のあり方を模索する、といったようなこと。

 廃止ありきではなく、今はまず、その点に知力を傾注させるべきだと考えています。

 さて最後に、そんなようなことを踏まえながら迎える第60回目のメモリアルグランプリ。冒頭で触れた年度代表馬の選出に関するだけでも、例年通りの大注目の一戦になります。

 モーリスが国内GI2勝と海外GI1勝のGI計3勝ですが、有馬記念をラブリーデイが勝てば宝塚とのグランプリ連覇に秋の天皇賞を加えた3勝。ショウナンパンドラが勝てばジャパンCと有馬の連勝です。

 もしそんな結果にでもなったら、どことなく先々の国際化戦略を占う一戦になるかも、と感じるのは、想像を膨らませ過ぎでしょうか?

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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