競泳界の新興勢力が“金の卵”を産む方法 ルネサンスが取り組んだ本気の組織改革
池江、持田が頭角を現した背景
若くして日本代表入りを果たした持田(右)と池江。その背景には、2人の所属先であるルネサンスが取り組んだ本気の組織改革があった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
2人が躍進した背景には、共通の所属先である株式会社ルネサンス(以下、ルネサンス)が本気で取り組んだ組織改革があった。そのキーマンであり、池江を指導する村上二美也コーチに改革の背景と成果、今後の展望を語ってもらった。
全国でスポーツクラブやテニス、スイミング、ゴルフなどのスクールを運営するルネサンスはもともと、テニススクールを起源としている。コナミやイトマン、セントラルといった大手と比べ、水泳では後発のクラブだ。テニスはブームに左右される側面があるのに対し、水泳は習い事としても人気があり、事業として安定している。そこで、会社として重要競技と位置づけ、10年前から本格的な強化に取り組み、有力な選手たちが育ち始めた。そして、14年に組織改革の一環として「スポーツクラブ事業企画部 競泳チーム」が誕生した。
競泳チームの充実したバックアップ
競泳チームができた昨年から、選手たちは加速度的な成長を遂げている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
選手たちには個別に体幹トレーナー、フィジカルトレーナーなどのサポートを準備している。また各地のスイミングスクールから強化選手、次世代を担う準強化指定選手たちが集まって合同合宿を行うなど、充実したバックアップ体制が整っている。
特に、合宿に参加できるメリットは大きい。スポーツクラブ内にスイミングスクールがあるルネサンスでは、十分な練習時間を確保できず、日頃の練習では数人で25メートルプールを1レーンしか使えないこともある。合宿では50メートルプールで午前・午後の2部練習、合間に補強トレーニングを行うなど、みっちりと選手たちを鍛えることが可能だ。村上コーチは「いろんな方たちに協力していただいています。さまざまな問題がクリアになったので、以前より選手に対する手厚いサポートができている」と、その成果を語る。
さらに、強化選手同士が高いレベルで競い合うことで、互いに刺激を受けるという効果もある。合宿で持田という同年代の身近なライバルと頻繁に練習するようになったことで、池江はさらに力を付けていった。
「持田とは抜きつ抜かれつでやってきましたから、お互いに相乗効果がありましたね。所属スクールは違えど、仲は良いと思います。良きライバルですよね」
有望な選手たちが競技に集中し、切磋琢磨(せっさたくま)できる環境が整ったことで、選手たちは加速度的な成長を遂げている。広報担当の村角英理子氏も「昨年組織的にバックアップする体制ができてから、持田選手も池江選手も急にグッとタイムが伸びた」と語っている。