14年ぶり中学生で代表入りの池江璃花子 担当コーチに聞いた指導方針と強さの秘訣

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初日の失敗からすぐに切り替え

女子50m自由形でも3位に入り表彰式で歓声に応えた池江 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 9日に行われた競泳の日本選手権(東京・辰巳国際水泳場)200メートル自由形で3位に入り、800メートルフリーリレーのメンバーとして14年ぶりに中学生での日本代表入りが内定した池江璃花子(ルネサンス亀戸)。他にも今季は50メートルや100メートルの自由形、50メートルバタフライでも、次々に中学記録を更新するなど、14歳の新星がまばゆい光を放っている。

 そんな彼女だが、今大会ですべてが順調だったわけではない。池江は本来、初日に行われた100メートルバタフライを得意としており、代表入りを期して臨んだが、「ちょっと落とし気味にいこうと思った」とタイムが伸びず、全体20位でまさかの予選落ちとなってしまった。

 ただ、そこから「自分ですぐ切り替えた」という池江。「前はちょっと駄目だと落ち込んで、あんまり口を利かなかったりしたんですけれど、それだと自分にマイナスだし、周りの人に迷惑がかかっていたことを学んだ」とすでに自らの経験から、気持ちを切り替える術を習得していることをうかがわせた。

 池江はどのような環境でその強さを身に付けたのか。彼女を指導する村上二美也コーチに話を聞いた。

大きく変わった練習への意識

池江の練習に対する意識にも変化が 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 まず、切り替えの早さについて、「年齢の割に自分のパターンを持っています。自分なりに見極めていますし、初日の失敗も何がどうだったのか自分で分かっていると思うんです。分かっているが故に、『もういいや』という感じで切り替えられたんだと思います」との見解を示した。

 さらに、村上コーチが指導を始めた2年前から一番変わった部分が「練習に対する意気込みや姿勢」なのだそうだ。

 もともとは100メートルの練習ですら嫌がっていたというほど、短距離を好むスプリンタータイプの池江だが、50メートルや100メートルの強さを出すために、200メートルなど長距離の練習も精力的にこなすようになった。村上コーチが「そこの取り組む姿勢が変わってきたと思いますし、しっかり結果に結びついている」と語るとおり、自身初の代表の座をつかんだ種目が、その200メートルになったのも決して偶然ではない。
 現在も、バランスよく強化していきたいという意向から、個人メドレーを中心に練習している。村上コーチは「今後どうなるか次第」と濁したものの、今後は個人メドレーにもエントリーする可能性もあるほどだ。

 池江に練習をサボりたくなるときはあるかと質問すると、「面白いテレビがやっているとき」と答えるなど、まだまだ中学生らしい一面をのぞかせたものの、泳ぎの技術だけではなく、メンタルの部分でも大きな進歩を遂げたようだ。
 ただ、これまでも大会への入り方の失敗を何度か繰り返しており、村上コーチは「早く自覚を持ってやってもらえれば」とさらなる意識改革を求めている。

ライバルの存在など、周辺環境の充実

一学年上のライバル持田(左)とは刺激をしあう良い関係 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 成長にはライバルの存在も欠かせないが、池江には幼いころから共に練習してきた持田早智(ルネサンス幕張)というライバルがいる。学年は持田が一つ上だが、合宿ではいつも一緒で仲が良い。彼女に負けたくないという思いは、200メートル自由形で3位になり、リレーでの代表入りを喜んだ一方で、2位の持田に敗れ「負けないつもりで泳いでいた」と涙を流す姿からもはっきりとうかがい知ることができた。

 そんな気が強い彼女に対し、村上コーチは人前で叱ると素直になれないところがあるため、2人きりで、一つ一つひも解くように話をするのだという。「多感な時期ですから、あの子の性格と戦いながら、立ち居振る舞いをしています」と、若い選手を指導するポイントを明かしてくれた。

 泳ぎに関しては、「いじる必要はまったくない」と語っており、池江の特徴である手前から最後まで水を押し切る効率の良いストロークを生かし、良いところをそのまま伸ばしていく方針だ。所属するルネサンスも競泳選手の強化に取り組んでおり、サポート環境も良くなっているそうだ。

 村上コーチの話からは池江の心身の充実ぶりに加え、ライバルや指導者といった周辺環境の良さをうかがわせた。こういった状況を見る限り、シンデレラガールの勢いは、まだまだ止まることはなさそうだ。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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