異なっていたNPB選抜選手の意気込み 思いの差が見えたプレー

スポーツナビ

1回無失点の投球を見せた安楽だが、制球を乱す場面が多く見られ、課題の残る登板となった 【写真は共同】

 6月29日に神宮球場で行われたユニバーシアード日本代表壮行試合「侍ジャパン大学日本代表vs.NPB選抜」は、月曜日にもかかわらず2万649人の観衆が詰めかけ、大学代表の2番手・田中正義(創価大)の奪三振ショーなどで大いに沸いた。試合も中盤から終盤にかけて、手に汗握る接戦で、終わってみれば3対2でNPB選抜が勝利。結果だけを見れば、プロがなんとか意地を見せた格好となったが、それぞれの様子を振り返ると、そのプレーには個人の思いの差がうかがえた。

笑顔があふれていた安楽&高橋

 NPB選抜の顔はなんといっても安楽智大(東北楽天)と高橋光成(埼玉西武)というドラフト1位の高卒ルーキーコンビだった。試合前に並んでグラウンド入りすると、旧交を温めるように外野でキャッチボール。その表情からは余裕が感じられた。安楽は「気は楽です。チームの先輩からは『打たれたらどうなるか分かっているな』と言われましたよ」と冗談で報道陣を笑わせ、高橋も「久しぶりに(安楽と)野球ができるので、楽しみ」と、まだ18歳の少年らしさがにじみ出ていた。

 同じように、高卒2年目の岸里亮祐(北海道日本ハム)も練習中は余裕の笑みを見せていた。「ホームランを打ちます」と冗談めかしながら、「相手はアマチュアなので特に気負いはない。気持ち良く送り出したいが、負けられない」と明るく宣言。ユニバーシアードの初戦(6日、韓国戦)まで1週間と迫り、緊張感にあふれた試合前練習をしていた大学代表とは対照的な雰囲気を醸し出していた。

 だが、彼らの表情は試合後に大きく変化した。安楽は1回を無失点に抑えるが、先頭打者にストレートの四球を与え、その後も制球を乱す場面が多く見られた。高橋も6回から登板するが、大学代表の3番・吉田正尚に「自信を持っていた」というストレートを完璧に捉えられた右中間への一発を浴び、思わず苦笑いを浮かべた。

 昨シーズン、イースタン・リーグ2位の安打数(107安打)を放った岸里も、試合では4打数無安打2三振。田中には149キロのストレートで空振り三振を喫し、試合前の笑顔がうそのように真剣な表情に切り替わっていた。「(大学代表の)投手は予想以上にレベルが高かった。中でも田中投手はプロでも通用する。初速と終速の差がなく、ホップしてくるようだった」と脱帽。悔しさを押し殺しながらも、早ければ2年後には実現するプロでの再戦へ、意識を切り替えていた。

プロの意地を見せた西武・山川

 試合の主役をほぼ田中に奪われたNPB選抜だったが、その中で意地を見せたのは西武・山川穂高だった。山川穂は2013年の東アジア大会では日本代表の4番として金メダル獲得に貢献し、日の丸の重みも知っている。ルーキーイヤーの昨シーズンは1軍で2本塁打を放つなど、今回のNPB選抜では実力、実績ともに十分。試合前には「(大学時代に出場した代表戦以上に)緊張感がありますね。プロの意地はあります」と、アマチュア相手に負けられない姿勢を、ひと際みなぎらせていた。

「4番・一塁」でスタメン出場した山川穂は、初回からその緊張感を良い意味でさく裂させる。2死三塁のチャンスで打席に入ると、2ボール1ストライクから右中間スタンドにうまく運ぶ先制2ラン。守ってはその裏、2死二塁から大学代表の4番・茂木栄五郎(早稲田大)が放ったライト線を破りそうなライナーをジャンピングキャッチ。身長176センチ、体重100キロの大柄な体を目いっぱい使ったプレーでスタンドを沸かすと、その後も鳴り物応援のない球場中に響く声でマウンド上の投手を鼓舞し続けた。

 攻守にわたる活躍が評価された山川穂は、試合後のお立ち台にも呼ばれ「シーズン中とは違う緊張感があった。恥をかかないように頑張ろうと思っていた」と、高卒選手には見られなかった“プロの意地”を見せつけた。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント