美宇・美誠の才能はどう育まれたのか? コーチとして2人を育てた母の告白
14歳コンビが世界卓球代表に
中国・蘇州で行われる世界選手権出場が決まった伊藤美誠(左)と平野美宇 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
まだあどけなさが残る2人の選手は、弱冠14歳とは思えない優れた競技パフォーマンスで、すでに大勢のファンを魅了している。いったいあの才能はどのようにして養われたのだろうか。その秘密に迫るべく、中学に上がるまで彼女たちのコーチをしてきた両選手の母親に話を聞いた。すると対照的ともいえる2人の指導の違いが見えてきた。
「五輪で金」が平野親子の夢になった瞬間
07年の全日本選手権バンビの部で優勝した際、「五輪で金メダル」を口にした美宇ちゃん 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「あの子が自分の夢を『五輪で金メダル』と口にしたのは、2007年の全日本卓球選手権バンビの部で優勝したとき。表彰式直後のテレビ取材で初めて自分からそう言ったんです。当時はキティちゃんが大好きで、将来の夢は“キティ屋さん”と言っていたくらいなのに(笑)。私はちょっと心配になって、無理して周りに合わせなくていいのよと言いました」
すると美宇ちゃんは、「ママ、違うの。もう美宇の夢は五輪で金メダルなの」ときっぱり告げたそうだ。それまで真理子さんはメディアの過剰な報道から娘を守るように、「五輪を目指しているわけじゃありません」と公言してきたが、この瞬間に「五輪で金メダル」は2人の夢へと変わった。
夢の成長に合わせて環境を整える
彼女はプロの競技指導者ではない。ただ結婚前に10年間の教師歴があり、子どもの指導においては立派なプロといえる。実際、彼女の卓球教室を訪ねると、その練習がなぜ必要なのか、それをするのとしないのとでは何がどう違うのかなどを生徒たちに順序立てて丁寧に説明している。美宇ちゃんに対しても、本人が答えを導き出せるよう語りかけることを大切にしてきた。時にはつい感情的になってしまうことや、本人の耳に痛いことを進言することもあるが、「反省の繰り返しです。一方、親だからこそ見えることもあって、それは良い点に関しても同じです」と真理子さん。母として、コーチとして、美宇ちゃんの優れた点をどこに見いだしているのだろうか。
「あの子のすごいところは根気強く努力し続けられるところ。そして、高い意識を持ち続けられるところです。それは卓球だけでなく、折り紙が上手に折れなければ、紙がくしゃくしゃになるまで何度も折る。二重跳びがうまくなりたければ、卓球練習の休憩時間に跳んでいる。卓球の練習を休みたいと言ったことも一度だってありません。親の私が驚くぐらい、ひたむきで謙虚。そのモチベーションは人との比較でもなく、周りからの評価でもなく、自分の納得感にあるんです」