窮地に立たされたL・エンリケ監督 難題解決へ、極めて重要な1カ月を迎える

待ち望まれた新監督の就任

新監督就任を待ち望まれていたL・エンリケだったが、シーズンの折り返しを迎える段階で早くも窮地に立たされている 【写真:ロイター/アフロ】

 昨季バルセロナの6シーズンぶりとなる主要タイトル無冠が決まった際、現在アルゼンチン代表を率いるヘラルド・マルティーノにはバルセロナの監督に必要な能力が欠けていると主張していた大多数のカタルーニャメディアは、クラブOBであるルイス・エンリケの新監督就任を天恵のごとく待ち望んでいた。

 その1年前。病に倒れたティト・ビラノバの後任としてマルティーノが急きょバルセロナと契約した際から、既にL・エンリケは一部のカタルーニャメディアによって後任候補の一人に挙げられていた。当時セルタの新監督に就任して間もなかった彼は、まだバルセロナの監督を務めるにふさわしい実績を残していなかったというのに。

 しばしばL・エンリケはジョゼップ・グアルディオラの系譜を次ぐ指導者として期待されてきたが、そのイメージはローマ、セルタと他クラブの監督を務める中で薄れていった。いずれにせよ彼はグアルディオラが描くものと同じプレースタイルを志向しながら、どのチームでも目指すスタイルを十分に実現することができていない。

 それだけではない。グアルディオラとは異なり、L・エンリケはあたかも問題の核心がそこにあるかのように、常に選手たちを自身のコントロール下に置くことを重視してきた。しかもチームは主要タイトル無冠に終わった直後で、選手たちは前任者の時代遅れな指導法に不満を抱いていたとも言われていたため、彼は就任直後から力強くロッカールームに足を踏み入れた。

 さらにクラブは、マルティーノには与えなかった多数の新戦力をL・エンリケに与えた。イバン・ラキティッチ、ジェレミ・マテュー、クラウディオ・ブラボ、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン、ルイス・スアレスら重要な即戦力の加入に加え、最終的にはシャビも残留を決意した結果、チームの選手層は確実に増し、リオネル・メッシは各ラインにそろったクラック(名手)たちに囲まれてプレーできるようになった。穴のないコンプリートなチームを、クラブの隅々まで熟知する監督が率いる体制が整ったのである。

多くの試合で期待外れのパフォーマンス

チームは不安定なプレーが続いており、期待外れのパフォーマンスに終始している 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、実際はそうではなかった。第17節までを終えて、まだバルセロナはリーガ・エスパニョーラでは消化試合が1つ少ない首位のレアル・マドリーと勝ち点1差につけている。だがチームはシーズンの折り返しを迎えようとしている現在に至っても不安定なプレーが続いており、リーガでもチャンピオンズリーグでも多くの試合で期待外れのパフォーマンスに終始している。

 多くの場合、それらの試合を解決してきたのはメッシとネイマールのタレントだった。徐々にラキティッチから定位置を奪回しつつあるシャビの貢献により、問題を解決した試合もあった。

 その傍ら、チームは依然として戦術的な行き詰まりを打破することができていない。システムはこれまでと同じ4−3−3ながら、世界中のフットボールファンを魅了したプレーは過去のものとなった印象だ。具体的なプレーアイデアを見失った今のバルセロナは、時折輝きを放つ個々のタレントによって強豪クラブの1つという立場を保つにとどまっている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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