今日の推しメン#007「スピアーズが自分を変えてくれた。本気のハードワークで2年越しの優勝へ」 オペティ・ヘル

チーム・協会

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手やスタッフを“思わず推したくなるエピソード”について紹介する連載インタビュー「今日の推しメン」。第7回は、スピアーズで先発やボムスコッドとして大活躍中のオペティ・ヘル選手です。現在体重は129kgでチーム最重量プロップ、“目立ちすぎた秘密兵器”の異名を持つオペティ選手ですが、実は意外な弱点も……⁉

小石を入れたペットボトルが、ラグビーボールの代わりだった

トンガ出身のオペティ選手がラグビーと出会ったのは小学生の頃。トンガではラグビーが盛んで、周りに影響され、自身も挑戦したいと思ったそうです。

「最初はペットボトルに小石を入れたものをボールの代わりに投げ、裸足で走り回っていました。ただ、ペットボトルだとパスがなかなかつながらない(笑)。前進するには、ペットボトルを持ったまま相手に当たるしかないんです。おのずとボールキャリーが得意になりました」。小学校高学年でようやく靴を履き、ラグビーボールを使ってプレーをするようになったと話します。

力強いボールキャリーを見せるオペティ選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

高校でオーストラリアへ留学したオペティ選手は頭角を現し、ラグビーオーストラリア高校代表に選出されました。プロラグビー選手の道を意識し始めたのもこの頃だといいます。「代表に選ばれるまでは、軍人だった父と同じ道を歩もうと思っていました。しかし、代表のキャリアがあるコーチから、ラグビースキルだけでなく将来のことまでいろいろと教わり、ラグビー選手としての将来を意識するようになりました」

高校卒業後2年間は完全にラグビーから離れていたものの、義兄にあたるトゥパ フィナウ選手からの誘いを機に、オペティ選手はスピアーズでラグビーを再開。「来日前に抱いていた日本の印象は、一言で表すと“ミステリー”でした。トゥパがプロ選手、家族両方の面から、日本でどのように生活すればいいのか手取り足取り教えてくれたことが支えになりました」

仲良し兄弟のオペティ選手(写真左)とトゥパ選手(写真右) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

スピアーズの初優勝が自身のターニングポイントに

日本でのキャリアは今年で6年目に突入。「入団以来、選手やコーチ、チーム文化などから多大な影響を受けました。スピアーズが自分を変えてくれたと思っています」とオペティ選手は力強く語ります。

「スピアーズが初優勝したリーグワン2022-23シーズンはターニングポイント。自分自身が大きく成長できたタイミングでした。頂点に立つためには、本気で毎日ハードワークしないといけないのだと身に染みましたね。他の選手たちがハードワークを重ねていることも、改めて認識しました」

リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント決勝では、マルコム・マークス選手、加藤一希選手とスクラムで奮闘 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

努力が実を結び、オペティ選手がラグビー日本代表に招集されたのは2024年秋のこと。同年10月のオールブラックス戦では、初キャップを得ただけでなく印象的なトライを決めました。「代表のトレーニングは本当にきつかった! 食べることが何よりも好きな自分が、あまりに疲れすぎて食べられなかったほど」と苦笑い。オフシーズンから5kgほど体重が減った結果、「身軽になり素早く動けるようになったので、チームに貢献できることが増えたように思います」と振り返りました。

今シーズンは、優勝に届くレベルで調整できている

オペティ選手は、今シーズンの自身の目標をこう述べます。

「まずはいいラグビーがしたい。そしてラグビーをエンジョイしたい。この2つができれば、結果はついてくるはず。あとは、フィールド内外でチームメイトや家族のためにしっかり貢献できれば。“チームマン”として周りをケアしながら、一瞬一瞬を楽しもうと思います」

パワーとしなやかさが共存するオペティ選手のボールキャリー 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

オペティ選手が優勝シーズンを経て学んだこと――。それは、「もっとできる!」と自分自身を奮い立たせることで、試合結果やチームの方向性が好転することです。

「プレッシャーを抱えつつ、自分のベストパフォーマンスをどれだけピークに合わせられるかが大事。今シーズンは優勝に届くレベルで調整できていると実感しています。間違いなくエキサイティングなシーズンになるはず!」と胸を張ります。

オペティ選手は2月22日の静岡ブルーレヴズ戦でリーグワン50キャップを達成 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

将来的に「世界に名前が知られるような選手になりたい」と話すオペティ選手。「ジャパンの3番がすごい!」と世界中から注目される日もそう遠くないと確信しています。

オペティ選手のビッグスマイルは、オレンジアーミーの癒やし(写真:せきねみき) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

編集後記:新婚ほやほやのオペティ選手。奥さまの手料理で一番好きなのは、ミートボールがたっぷり乗った「スパゲッティミートボール」だそう。夫婦のマイブームは「ディナーデート」と「ムービーナイト」。どんな映画を一緒に観るのかを尋ねると、「奥さんはホラー映画を観たいと言うんだけど、僕は怖いからディズニー映画とか……」。一見無敵のオペティ選手に、まさか怖いものがあったとは! 人は見かけによらないものですね。

取材・文:せきねみき(ライター・コラムニスト)
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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