今日の推しメン#002「どんな試練でも努力して乗り越えれば、明るい未来が待っている」 古賀駿汰

チーム・協会

写真:せきねみき 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手やスタッフを“思わず推したくなるエピソード”について紹介する連載インタビュー「今日の推しメン」。第2回は、今季の開幕戦でリーグワン初キャップを獲得し、自身の座右の銘「雲外蒼天」(=どんな試練でも努力して乗り越えれば、明るい未来が待っている)を体現している古賀駿汰(こが・しゅんた)選手が登場。古賀選手のこれまでのラグビー人生や、スピアーズ入団にまつわるストーリーを伺いました。

リーグワン初キャップを受け、オレンジアーミーや友人、ラグビー関係者から祝福の嵐。数日間メッセージの通知が鳴りやまなかったそう 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

ラグビー人生のターニングポイントは、高1のときの涙

ラグビー経験者の父に連れられて、地元・福岡県久留米市のラグビースクール「りんどうヤングラガーズ」で3歳からプレーを始めたという古賀選手。「今までブランクなくラグビーを続けていますが、小学2年生から3年生の間、一度だけラグビーと距離を置きたいと感じた時期がありました。コンタクトプレーが嫌になったんですよね。それで野球がしたいなと思って、たまたま試合に出させてもらったらボロ負けして。すぐラグビーに戻りました」

中学校ではバスケ部とラグビースクールの掛け持ちというハードワークをこなしたそうです。高校は、ラグビー強豪校として有名な東福岡高等学校(以下、東福岡)へ進みます。「自分はこれまで県代表などの選抜メンバーに選ばれたことがなかったのですが、高校に入ったらレベルの高い環境でラグビーに打ち込んでみたい。その思いを父に伝え、進路を決めました」

古賀選手は、ポジションがスクラムハーフの選手としては180cmと長身。「ポジションは小学校時代からずっと変わっていないんです。実は小学生の頃、かなり小柄だったのですが、中学2年生から3年生にかけて急に20cmほど背が伸びました。東福岡でラグビーをするにあたって、慣れ親しんでいたポジションを変える気持ちにならず、今に至ります」と教えてくれました。

東福岡では、プレー面で力量が及ばず、先生からよく叱られていたそう。「これ以上注意されないように、パスを中心に必死で練習し続けました。3年生になるまで公式戦にまったく出られず、しんどい思いをしていました。それでも心折れずにいられたのは、地道な努力のおかげで、できなかったことが少しずつできるようになり、ラグビーが楽しくなっていったから」と話します。毎週のように行われていた部内戦で経験を積み、3年生で花園(全国高校ラグビー大会)という大舞台でのプレーがかなったのです。

この後青山学院大学を経てスピアーズに入団しますが、これまでを振り返って、ラグビー人生のターニングポイントがどこにあると思うかを尋ねました。「高校1年生のときに、負けん気の強い同期たちにプレーをとことんダメ出しされたことが悔しくて、大泣きしたことです。同期で集まると今でもネタにされます。それでも、あのときの涙があったからこそ、今の自分があると感じています」

スピアーズで唯一のトライアウト入団選手

古賀選手は「トップリーガー発掘プロジェクト」という合同トライアウトがきっかけで、2019年にスピアーズ入り。「ゼネラルマネージャーの石川(充)さんと、採用担当の前川(泰慶)さんに声をかけていただいたんです」。スピアーズでは、現時点でトライアウト入団の選手は古賀選手ただ一人。社員選手として契約し、現在クボタの花形部署と呼ばれる機械業務部で渉外を担当しています。

今年で入団5年目の古賀選手。同じくスクラムハーフの谷口和洋選手と岡田一平選手のケガも重なり、昨年11月25日に行われた東芝ブレイブルーパス東京とのプレシーズンマッチのリザーブメンバーに名を連ねました。

この一戦に出たことで「覚悟が決まった」という古賀選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

そして12月10日、「NTT ジャパンラグビー リーグワン 2023-24」の東京サントリーサンゴリアスとの開幕戦でもメンバー入りを果たし、後半19分に出場。栄えあるリーグワン初キャップを獲得しました。「開幕戦でメンバー入りしたことを最初に伝えたのは、ラグビーとの縁をつくってくれた父です。“おめでとう”と喜んでくれました」

第1節のサンゴリアス戦では、追いかける展開でグラウンドに入ったからか「気持ちが吹っ切れていて、思い切りプレーしました。初キャップの重圧は感じませんでした」と古賀選手。12月16日に行われた第2節の三重ホンダヒート戦も後半17分から登場。「第1節とは真逆で、大きく点差を突き放した状況でした。のびのびプレーできたと思います」。今後の課題は「拮抗した試合展開で出る際の“心の持ちよう”。これまで2試合に出たことは大きな自信になったのですが、まだこのパターンを経験していないので」と次の試合を見据えます。

第2節の三重ホンダヒート戦では、リーグワン出場2戦目とは思えない堂々としたプレーでオレンジアーミーを魅了 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「今後1試合でも多く試合に出続けて、スターティングメンバーも狙っていきたい」と話す古賀選手。取材中、真剣な表情の中にも優しい笑顔がこぼれていたのが印象的でした。入団から5年近く公式戦に出られない日々が続いていたにもかかわらず、心折れることなく努力し続けられているのは、東福岡時代にぐっと踏ん張った経験があってこそ。古賀選手の今後の活躍を期待せずにはいられません。

取材・文:せきねみき(ライター・コラムニスト)
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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