宇都宮ブレックスの比江島慎が初のMVP受賞 個人としてもチームとしても充実した2月を回想

大島和人

「自分としても怖いぐらい調子がいい」と話してくれた 【©TOCHIGI BREX INC.】

 Bリーグの月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」は、選考委員長の佐々木クリス氏をはじめとした選考委員による合議で決定されている。2025年2月の月間MVPには、宇都宮ブレックスの比江島慎選手が選出された。

 比江島選手は1990年8月生まれの34歳で、191センチ・88キロのシューティングガード。2月に行われたFIBAアジアカップ2025予選 Window3では選出されなかったものの、日本代表として2023年のFIBAワールドカップ沖縄大会や2024年パリオリンピックでの活躍をご記憶の方も多いだろう。細かい緩急や重心移動、フェイクを駆使したドライブとクリエイト能力はこのリーグでも唯一無二。近年は3Pシュートにも磨きをかけ、キャリアはまだ右肩上がりの成長を続けている。

 2月の4試合を振り返ると、比江島選手は1試合平均15.8得点、5.8アシスト、3Pシュートの成功率は65.2%という抜群のスタッツを残していた。

 しかしチームはケビン・ブラスウェル ヘッドコーチが1月末から入院し、2月24日に逝去。コート上で戦う選手にとっては、指揮官不在の難しい時期でもあった。チームは痛みを感じつつ、彼の思いを背負い、シーズン後半戦へ向かおうとしている――。今回はそんな比江島選手のインタビューをお届けする。

チーム全員で支え合いながら戦った2月

2月の3Pシュート成功率は65.2%と驚異的なスタッツを叩き出した 【(C) B.LEAGUE】

――2025年2月の「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」受賞のご感想をお願いします。

 なかなか自分には縁がないものかと思っていました。この年(34歳)になっての初受賞なので、素直に嬉しいです。

――昨シーズンはチームメイトのD.J・ニュービル選手が2月、3月と2カ月連続で受賞していて、今シーズン(B.LEAGUE 2024-25シーズン)も12月に受賞した月間MVPの常連です。羨ましく思ったりしていましたか?

 羨ましいといった感情は特に無いです。D.Jはもう圧倒的な活躍をしていたので、当然という感じで。みんなで祝福していました。

――2月は悲しいニュースもあった中、宇都宮ブレックスはジーコ・コロネル ヘッドコーチ代行のもと4連勝で終えました。チームはどのような状態でしたか?

 2月の4試合はバイウィーク前で、何よりヘッドコーチがいないという状況でした。それでも「チーム全員で支え合いながら」というのは、1月から変わらずやり続けていました。細かいところの修正などを、チームとして意識しながらの期間でもありました。100%の出来ではなかったですが、成長を感じられた時期でした。個人としても自分のパフォーマンスもしっかり出しながら勝利に貢献できて、すごく充実していました。

――比江島選手は2月2日の茨城戦で28得点を挙げています。1試合平均15.8得点・5.8アシストを記録し、3Pシュートの成功率も65.2%という驚異的な数字でした。比江島選手自身のコンディション、シュートタッチはどうでしたか?

 1月からずっと調子は良くて、本当に自分でも怖いくらい練習でも(シュートが)入っていました。相手は多分すごく守りづらかったでしょうし、相手が3Pシュートを警戒してくれれば、ドライブが活きて、アシストもできました。得点に絡みながら、効率よくプレーできた印象はあります。

若手の成長がチーム強化に直結

――チームのこともお尋ねします。今シーズンは高島紳司選手、小川敦也選手と若手が出場時間を増やしています。比江島選手が彼らをどう見ているか、どんなアドバイスを送っているか、お聞かせください。

 彼らの持っている能力は間違いないし、昨季とメンバーがほとんど変わらない中で優勝を狙うのであれば、若手選手の成長が必須だと思っています。細かいアドバイス等をすることはあまりないですが「本当に自信を持ってやってほしい」と伝えています。彼らが試合に絡んで、自信をつけていることは、チームの向上にもつながっている要因だと思います。

――小川選手と高島選手に、比江島選手にない強みがあるとすれば、どんな部分が挙げられますか?

 それはもう、圧倒的にスピードです。2人とも、僕に無い身体能力、クイックネスとフィジカルがあります。今のブレックスでだけではなく、日本代表が必要としているところを持っていると思います。あとは自信を持つことと、その中でもっと効率よく3Pシュートを決めながらプレーすることができれば、間違いなく日本の力にもなっていくと感じていますし、そこはすごく期待しています。

比江島が期待する高島紳司(右)と小川敦也 【(C) B.LEAGUE】

――2月24日に亡くなったケビン・ブラスウェル ヘッドコーチについてもうかがいます。比江島選手がヘッドコーチからどんな影響を受けたか、お話いただけますか?

 メンタル的なところです。スキル、シュート力については「申し分ない」とずっと言ってくれていました。あとはシュートセレクションの部分で「もっと3Pシュートを打ってほしい」と言われていました。日本代表も経験して、打つべきところで打ってはいたのですが、2本3本と連続で外すとどうしても打たなくなってしまう傾向があったんです。ケビンは「自分だったら何本でも打ち続ける。実際に相手はそっちの方が脅威だから、もっと打ってほしい」と、ずっと言ってくれました。

 ベテランの域にはなってきましたが、メンタル面はもっと向上する部分もあると思うし、そこを引き続き強くやっていければ、それがブレックスのためにもなる。もちろん、シュートが入らないときはあると思いますが、相手の脅威になれるようにやっていけたらと思います。

――2月だけでなく、2024-25シーズンの3Pシュート成功率もリーグ1位です。比江島選手のポジションや役割を「シューター」と表現してしまうと少し違うかもしれませんが、試投回数も以前より増えてきています。そこに、ヘッドコーチの影響はかなりあったということですか?

 そうですね。ケビンからすると、多分もっと打ってほしいと思うんですけど……。ケビンの期待に応えられるようにというところで、今も成功率も高く決められています。このスタイルで、シーズン終了まで行きたいですね。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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