三遠ネオフェニックスのヤンテ・メイテンが初のMVP受賞 自分の姿勢は「チームに貢献できることなら何でもやる」

大島和人

好きな日本食はしゃぶしゃぶと、カレーと、寿司がトップ3 【(C) 三遠ネオフェニックス】

 Bリーグの月間MVPに相当する「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」は、選考委員長の佐々木クリス氏をはじめとした選考委員による合議で決定されている。2025年1月の月間MVPには、三遠ネオフェニックスのヤンテ・メイテンが選出された。12月のデイビッド・ヌワバに続き、三遠の選手が2カ月連続で栄誉を勝ち取っている。

 メイテンはアメリカ出身の28歳で、201センチ109キロのパワーフォワード。2022-23シーズンに加入して今季が在籍3年目となる。1月は1試合平均15.8得点9.3リバウンドと好成績を挙げた。出場時間の得失点差を表すプラスマイナスは+23.7という驚異的なスタッツで、1月中の「全勝」に大きく貢献した。

 メイテン自身も多彩なスキルセットを持つ選手だが、その最大の強みは周りを助ける献身的でクレバーなプレー。佐々木委員長が「オフェンスシステムを支えるスクリーンをかけるために移動するスピード、かけるタイミング、角度、位置が芸術的とも言える精度で繰り返され」と評する通り、個人のスタッツに残らない職人的な動きにその本領はある。

 今回のインタビューでは2月終了時点で32勝4敗と絶好調の三遠と、メイテン選手の「スゴみ」について、本人の言葉で存分に語ってもらっている。

「わがままな」選手がいないのが三遠の強み

実直にリバウンドに跳ぶのもメイテンの特徴の一つ 【(C) B.LEAGUE】

――2025年1月の「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」受賞、おめでとうございます。2024年12月のヌワバ選手に次いで、2カ月連続で三遠の受賞ですが、ご感想をお願いします。

 自分がMVPを取るほどのことができたとは思っていません。チームメイトとコーチングスタッフ、あとはファンも含めた努力でこの成果が挙がりました。皆さんのおかげでこの賞を取れたと感じています。

――三遠は1月・2月は無敗で終え、現在17連勝中です。なぜこれだけの結果が出ているのでしょうか?

 何か特別なことがあるわけではなく、選手たちがコーチの指示を信じて、しっかり自分たちのシステムを遂行できているからです。私たちは特定の選手がスコアするのでなく、誰が得点を取ってもおかしくないチームです。チームにインパクトを与えるプレーが、誰しもに起こるチームです。そして「わがままな選手」がいません。それが上手く行っている理由です。

 今までと今年の違いはボールプレッシャーです。相手にボールを思い通りに運ばせないところも好成績の理由です。そういうすべてのコンビネーションで、今のチーム状態があります。

――月間MVPの佐々木クリス選考委員長はメイテン選手のスタッツに残らないプレー、特にオフェンスのスクリーンを称えています。メイテン選手自身がプライドを持っている、強みだと思っているプレーはどこでしょうか?

 チームに貢献できることなら何でもやろうというのが、自分の姿勢です。スタッツは本当に全く気にしていません。試合が終わったあとも(スタッツを)全く見ないので、通訳に突っ込まれたことがあります。自分がどれだけチームの勝利に貢献できているか、インパクトを与えているかに重きを置いています。

 スクリーンの話が出ましたけど、スクリーンをしっかりかけることで、シューターがしっかりいいシュートを打てますよね。そういうことでチームメイトの手助けができれば、それが自分の喜びになります。

――メイテン選手はインサイドプレーヤーとして小柄ですが、その中でなぜこれだけのインパクトを残せているのでしょうか?

 自分が小さいこと、小さいが故によりハードにファイトしないといけないことは分かっています。だからこそよりアグレッシブに行くことを常に心がけていて、それがいい方向に働いていると思います。アグレッシブに、タフにプレーすることで相手のスコアを抑えられているし、自分のスコアが伸びている。自分がアグレッシブに仕掛けることでディフェンスをシュリンク(収縮)させて、チームメイトが空く。そういう現象が起こっています。

――カレッジ時代のスタッツを見返してみると、3ポイントの成功率が50%を超えているシーズンがありますし、最終学年は1試合平均で2.6本打っています。今のスリーをほとんど打たない、インサイドの「職人」的なスタイルに変わった理由はどこにあるのですか?

 自分でもよく分からないのですが、実際3ポイントのスタッツは大学時代に比べて落ちてしまっています。そこは自分が今ちょうど頑張って良くしようとしている部分です。自分はボールハンドリングもできるので、そこを戻せればもっといい選手にもなれるはずです。

 あとアウトサイドのシュート確率が落ちている分、他を頑張らないといけません。だからインサイドでの貢献度を上げられているところも、ひょっとしたらあるかもしれません。

――メイテン選手は来日して3シーズン目に入っています。来日直後と今で、ご自身にどういう変化がありますか?

 一緒にプレーをしている選手の特徴で、自分もプレースタイルを変えています。初年度は自分がボールを持つ機会も多かったのですが、翌年以降はそういう選手がリクルートされて、そこに労力を多く割かなくても良くなりました。あと今の三遠はいいシューターが多いので、自分が外回りでシュートを打つ必要性が下がりました。それもインサイドのプレーが増えている理由です。

 私たちのコーチは選手の才能を見極める力が高くて、そのおかげでいい選手も集まってきています。そこがチームと私のプレーに大きな変化をもたらしています。

――大野篤史ヘッドコーチは、メイテン選手から見てどのようなコーチですか?

 実はアメリカの友達や、アメリカにいるコーチからもよく聞かれる質問です。まずプレーヤーのことを深く理解できているコーチだと感じています。選手がそれぞれの能力を発揮できる、または選手が心地よくプレーできる使い方をしてくれます。
 さらにディフェンスをしっかり読んで、自分の判断でプレーしていいという、ちょっとした自由を与えてくれるコーチです。間違った読みをしたときは指摘をされますが、そこでいいプレーができれば自由度が上がります。
 他のコーチは個々の「読み」を許さず選手を制限しがちですが、大野さんは選手が主体的になって何を選ぶかを選択させてくれる。そこが成功の秘訣だと感じています。

――選手に自由を与えると、どうしてもそれぞれがセルフィッシュ(自分勝手)なプレーをしがちです。今の三遠がそうならないのは、元からチーム優先でプレーできる選手が揃っているのか、そういうカルチャーがあるのか、なぜだと思いますか?

 もちろん、その両方が関わっています。選手をリクルートするときに、自分勝手ではない選手を選んでいるというのもあるでしょう。チーム文化に基づいて、みんながプレーできているところもあると感じています。本当に選手みんなの仲がいいですし、それがコート上でも現れていますね。みんなが「いい人」というところが、チームの文化と混ざって、融合していい状態を生み出していると思います。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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